『ドラクエ3』リメイク版に絶賛と酷評のなぜ、中年ゲーマーが力説する「全世代に愛されるべき魅力」とは?
● 批判する人も愛をもって 「Steam」に見るアウェイ感 まず、好評と不評どちらが多いのか。ネット記事など、表に目立つ声は不評の方が多い印象であったが、ネットやSNSを片っ端からあたった感触だと、以外にも好評の方が多そうであった。もっとも、SNSでは「ネガティブな投稿を控えようとする人が一定数いる」ことを加味した上で、全体の意見の割合を判断していかねばなるまい。 また、Steamのレビューでは72%が好評としていて「やや好評」という判定だが、Steamのレビューはそもそも好評に偏りやすく、72%はそこまでいい数字ではない。 一方10月下旬に発売された、これも往年名作のフルリメイク『ロマンシング サガ2』は96%が好評の「圧倒的に好評」という判定である。『ロマサガ2』に比べるとだいぶ劣る『ドラクエ3』に寄せられた評価を見て、『ドラクエ3が駄作なのは歴然』という声もあるのだが、ここも少し慎重に判断したいところである。 というのも、Steamはゲーマー向けのプラットフォームで、『ロマサガ2』は(当時の原作の良さをふんだんに残しつつ)実に現代風のゲームに生まれ変わっているので、ゲームに慣れていてゲームが好きなSteamユーザーとの親和性が高い。 比する『HD-2D ドラクエ3』はターゲットがライトユーザーに向いているので、どちらかというと主戦場はニンテンドースイッチあたりが最適で、Steamはちょっとアウェイな感がある。なので、Steamのレビューを全体の感想とするにはやや危うく、あくまで参考として留めたい。 今作への賛否両論は色々なところで読めるが、長文が許容される場所(ネットの雑談掲示板や質問・回答型のナレッジコミュニティ、ネット記事のコメント欄など)では、腰の入った長文の批判的批評を読むことができる。
特に詳細な批評が繰り広げられているのはそれこそSteamの『HD-2D版 ドラクエ3』カスタマーレビューで、かなり辛口な評価をつけている人もいるが、ただのドラクエアンチがくさしているようなトーンではなく、その多くがドラクエを愛してやまない人が落胆しているケースや、ゲーム慣れしていて原作リスペクトもある人が苦言を呈しているケースであった。裏を返せば、それだけ多くの愛と期待の中で世にリリースされたゲームだったということである。 ● 賛成派と否定派が共に 「いい!」と思った点とは? 興味深いのは、本作に対して肯定的な人・否定的な人の双方で「いい!」と挙げている点と「ここはダメ」と挙げている点が、おおむね重なっていて一緒なことである。つまり「いい!」が強く出て「ここはダメ」な箇所が許容できる人にとっては高評価のゲームとなるし、そこが許容できなければ低評価となる。 高評価勢・低評価勢が共通して「いい!」と挙げているのは以下である。 ・グラフィックがきれい ・キャラの特技、エピソード、ボスなどの各種追加要素が楽しい ・オーケストラ生演奏音源によるBGMが素晴らしい 作品名にも含まれている「HD-2D」というのは、ドット絵と3DCGが融合した、超美麗で奥行き(3D)感のある2Dゲームのグラフィックである。 2Dというのは、原作ドラクエ3を含むレトロゲームに典型的な“上下左右”の世界観である。一方、最近のゲームはだいぶ3Dのものが主流になってきていて、これは“上下左右”に“前後”が加わった立体的な世界観である。 HD-2Dはスクエニの『オクトパストラベラー』というゲームで導入・確立された手法で、現代風の美しく3次元的な世界の中をキャラが上下左右・2次元的にレトロチックに動くというものである。これがとても評価された。