【舛添直言】ネタニヤフらの逮捕状請求に米国が猛反発、大国に翻弄されるICCは「戦争犯罪の追及」を貫けるか
国際刑事裁判所(ICC)検察局は、5月20日、イスラエルのネタニヤフ首相やハマスの政治指導者イスマイル・ハニヤらに対して、戦争犯罪容疑で逮捕状を請求した。そのことの意味と問題点を考えてみたい。 【写真】国際刑事裁判所(ICC)のカリム・カーン主任検察官 ■ 米国はICCへの制裁も示唆 ICCのカリム・カーン主任検察官は、昨年10月以降にガザにおいてイスラエルが行ってきた市民や援助要員への攻撃、食料・水道・電気などの遮断は、「戦争犯罪」と「人道に対する犯罪」に当たるとした。そして、ネタニヤフ首相とヨアブ・ガラント国防相に対して、「刑事責任を負うと信じられる合理的な根拠がある」と主張した。 また、ICCは、ハマスに対しても、市民を虐殺し、人質にとった疑いで、ハニヤと軍事部門トップのモハメド・デイフ、ガザ地区指導者のヤヒヤ・シンワルの3人に逮捕状を請求した。 これらの検察局の請求に対しては、予審裁判部が逮捕状を発行するかどうかを24日に決める。逮捕状が発行されると、容疑者が加盟国に入国すると逮捕されることになる。 今回のICC検察の決定に関しては、ネタニヤフは「馬鹿げた告発だ」と反発し、テロ組織のハマスとイスラエル国家とを同一視するのは問題であり、イスラエルの自衛権を否定するものだと批判した。 アメリカもイスラエルの主張を支持している。バイデン大統領は、イスラエルの行動はジェノサイドではないとし、ICCの主張を拒否した。ブリンケン国務長官は、「ひどく誤った判断だ」として、ICCに対する制裁の可能性についても検討すると言及した。
■ 割れる各国の対応、日本は沈黙 米議会でも批判が強まっており、下院のマイク・ジョンソン議長(共和党)は、ICC処罰のため、制裁を含むあらゆる選択肢を検討すると述べた。米議会では、ICCに制裁を科すための法案が、少なくとも2件提出されている。 共和党のチップ・ロイ議員(テキサス州選出)が提出した「非合法裁判対策法案」は、ICCが「アメリカとその同盟国の被保護者」に対する裁判を中止しないかぎり、その裁判に関わるICC関係者のアメリカ入国を阻止し、保持しているアメリカのビザを剥奪し、国内での財産取引を禁止するという内容になっている。 また、民主党のグレッグ・ランズマン議員は、今回のICC決定について、「緊張と分裂をさらに煽り、反イスラエルの陰謀を助長し、最終的にはICCの信頼性を損なうだけだ」と述べている。 アメリカやイスラエルはICCに加盟しておらず、イスラエルが関与するガザ紛争に対しては管轄権がないというのが両国の見解である。イギリスも、今回のICCの判断は戦闘停止や人質の解放に役に立たないとして反対している。 これに対して、フランスやスペインはICCの決定を支持している。また、BRICSの南アフリカも同様の立場を表明した。 日本やドイツは、明確な立場を表明していない。