「技能五輪」2大会連続メダル目指すデンソー、若き2人の技術者が腕振るう
2022年の第46回大会に続き2大会連続で「自律移動ロボット」の分野でメダルの獲得を目指すデンソー。ロボットのハードウエアを担う杉本三弥選手と、制御用のプログラミングを含めたソフトウエアを担当する鳥喰健太郎選手が息の合ったコンビネーションを見せる。ロボット開発で世界トップ水準の地位を維持し続ける日本の代表として、若き2人の技術者が腕を振るう。 【一覧表】トヨタグループ7社の業績詳細 杉本選手と鳥喰選手はともに21年4月にデンソー工業学園の門をたたいた同級生コンビ。クラスが同じで趣味もバスケットボールと共通点が多く、公私ともに仲が良い。技能五輪選手としては3年目を迎えた。国内大会では22年に銀メダル、23年には金メダルを勝ち取るなど着実に成果を上げてきた。 一方で「国際大会は国内とはガラッと違う」と気を引き締めるのはソフト担当の鳥喰選手。国際大会は「課題が6―7種目あり、6割程度のプログラムを事前に持っていけるが、ゼロからプログラムしなければならない課題もある」と話す。ハードも同様で、ロボットの一部機能をゼロから設計・製造する競技内容がある。杉本選手は「仕様に対して決められた部品でどうつくるかを、15―20分で考えないといけない」と発想力の重要性を指摘する。 この発想力については「4月から国際大会の選手として鍛えて伸ばしてきたところ」(杉本選手)であり、日々の訓練で自信も付いてきた。鳥喰選手も「ロボットを50センチメートル進ませるためにセンサーで距離を測るのか、タイヤの回転量なのか、同じ動きでも“手札”を増やしている」と成長を実感している。 国際大会本番まで1カ月を切った。さまざまなトラブルを想定した訓練に取り組む。「体験したことのないトラブルがいつも起こる。それが本番の怖さ」と語るのは、エキスパートを務めるデンソー技能人財養成部の岩本亮氏。それでも「過去と比較して、今回はハードもソフトも完成度が高い。選手が能力を発揮できれば金メダルを狙える」(岩本氏)と期待する。 7月に中国で複数の国の代表と親善試合を行い、金メダルを獲得した。9月の本番に向けて「最善の手を尽くしてメダルを本気で取りにいく」(杉本選手)、「デンソーチームとしてしっかりと結果を残す」(鳥喰選手)と2人とも臨戦態勢。積み重ねてきた技能を披露する日は近い。(名古屋・川口拓洋) 【自律移動ロボット】 自律して移動するロボットの設計・製造・加工をゼロから行う。現場環境に合わせたロボットを正確に早く構築、稼働できるかを競う。ハードウエア担当とソフトウエア担当の2人1組で課題に対応するが、互いの領域を補完することはできない。技能五輪においてペアで競う職種は少ない。パートナーを信頼し任せる部分と、共に話し合い最善の手を考える部分の両方が必要。コミュニケーションをいかに円滑にできるかがメダルの色を左右する。