ヨーロッパで広がる孤独 人とのつながりと極右政党躍進の関係
犬を散歩していると、ワンちゃんの存在がきっかけで会話が生まれることがあるってよく聞きますよね。「友だちがほしければ、犬を飼え!」という言葉があるとか、ないとか 。 さて、私も同じような経験があります。今までは(無愛想に)「ボンジュール」としかあいさつしてくれなかったご近所さんたちが、私に子供が生まれてからというもの、「あらまあ可愛いわね~!」とか「お嬢ちゃんは保育園には行ってるの?」などと聞かれるようになり、会話のキャッチボールができるようになったんです。近所のお店もしかり。そうすると、どんどんご近所さんの輪が広がっていき、少し外に出ると、必ず誰かしら知り合い一人、二人には会うといった風になりました。 知り合いが多くなればなるほど、おのずと会話をする機会も増え、自分がコミュニティーの一部になっているような感覚を覚え、まあこれがなんとも心地いいんですね。そう、クラス替えでほとんどの生徒を知らないうちはちょっと緊張しちゃうけど、夏休み前ぐらいにはクラスがまとまって、一体感が生まれる、そうあんな感じです。 そんな人とのつながりの心地よさを実感している今日この頃ですが、それに関する興味深い報道を見ました。それは1週間ほど前、ARTEというテレビ局のニュース番組でだったんですが、16歳から30歳の若者を対象にしたある調査によると、11パーセントが「自分は完全に孤独だ」と感じており、「どちらかといえば孤独だ」を合わせると46パーセントにまで達するとのことです。この結果を重く見たドイツ政府は、若者が孤立するのをいかにして防ぐかという対策を政府主導で練り始めているとか。ちなみにARTE は仏独共同出資のテレビ局で、ドイツの自治問題なんかも日常的に報道されています。 SNSで簡単に人と繋がれる時代に、孤独を感じるというのは皮肉な話です。なぜ「孤独・孤立」が問題になるのかというと、孤立状態が長く続くと、体に支障をきたすだけでなく、心理的には自己への評価が下がり、人間嫌いになり、さらには他人に対する信頼、特に権力への、民主主義への信頼を失っていく傾向にあるのだとか。それが私たちが生きる民主主義への脅威となりうる、とのことなんです。この構図を見ると、現在のヨーロッパでポピュリズム*が台頭していることにも、賛成はできないけれど、理解はできる気がします。 フランスでは、ヨーロッパ議会選挙での極右政党の躍進を重く受け止め、マクロン大統領が下院議会解散を決めました。今週と来週末には選挙が行われます。これが吉と出ることを祈りつつ、今回はこの辺で… A bientôt !! (アビアントー) *「ポピュリズム」とは、既存政党やエリート層を批判し、幅広く人民に受けるような政策を掲げその実現を目指す運動のこと。一般的にそれらの訴えは、非現実的であることが多い。
中村まゆ美