田中さんたちが運営する「青谷梅工房」（城陽市中出垣内）

　「最初から梅が大好きだったわけじゃない。青谷で活動し始めたら、いろいろなことが動いて、やめられなくなってしまって」。梅びしお、梅肉エキス、梅ジャム、梅シロップ…。梅の栽培・加工を行う「青谷梅工房」（京都府城陽市中出垣内）代表の田中昭夫さん（69）。開発し、店内に所狭しと並ぶ梅の加工品の数々を見渡し、苦笑する。 【写真】数々の加工品を開発した田中さん 　城陽市の青谷地域。香り高い大粒の梅「城州白」の産地として知られ、地域にある青谷梅林は、梅が開花する2～3月に「梅まつり」が毎年開かれる。観光地として知られる一方、梅の生産農家は後継者が不足している。 　梅との出会いは、小学校の教員をしながら、子どもたちに自然に親しんでもらう団体「城陽生きもの調査隊」の活動に取り組んでいた45歳の時。青谷地域に遊び場「青谷くぬぎ村」を設けた際、「地元にすごくおいしい梅がある」と耳にした。 　農家の後継者難を知り、「なら応援しようか」と、仲間とくぬぎ村でイベントを開催。やがて、市が青谷地域の活性化に取り組み始めると、特産品を開発する部会に入り、梅の振興に「だんだんと関わるように」。地域の空き家を借り、2011年に工房を開いた。 　城州白の評価は近年高まっている。青谷梅工房では、営んでいる梅林で採れた城州白を、千葉県の蒸留所にはブランデー用に、京都市内の醸造所にはフルーツビール用にそれぞれ出荷している。梅干しなどの加工品は、百貨店で販売されるまでになった。「香りが最高で大粒、おいしい。城州白の良さがやっと広まってきた」と手応えを感じている。 　昨年には「青谷まちづくりの会」を市民有志で結成した。梅が不作の年に農家の収入を助けるため、レモン栽培を青谷地域で普及させる活動を始めようとしている。 　「青谷の梅林がいつまでも続くよう、地域の魅力を発信して、移住してくる若者が増えれば」。夢は広がる。京田辺市在住。