「学校が嫌」は命を守るためのサインかも…山あいにある古民家カフェは、不登校の子も親も通える場所「一人で悩まないで」
学校に行くのがどうしてもつらいなら、いつでもここにおいで-。鹿児島県南さつま市加世田武田の「カフェやさしい時間」は不登校の子や保護者を一般客と同様、温かく迎えている。当事者の母が立ち上げた「学校に行きづらい子どもがいる保護者の会にじとつき」が毎月開かれ、子ども企画のイベントもある。夏休み明けの新学期を前に「学校が全てではない。一人で悩まないで」と呼びかける。 【写真】不登校などについて語り合う保護者ら=南さつま市のカフェやさしい時間
保護者会を始めたのは同市の元養護教諭新(しん)陽子さん(51)。中学3年の娘が4年ほど前から学校に行きづらくなった。同じ境遇の親同士が話せる場をと2023年1月に立ち上げた。 当初は公民館で開いていたが、人目を気にせず入りやすい場所を模索。山あいにある築100年超の古民家カフェにたどりついた。「毎日来たい」と娘が気に入り、オーナー東重久さん(72)に相談。昨年9月からカフェでの保護者会が始まった。4月からは新さんがスタッフとして常駐する。 保護者会には市内外から毎回4、5人訪れる。体験を語り合い各市町村の支援状況を確認。「自分たちだけではない」と心を通わす場となっている。県内の女性(40)は「親も子も何をしていいか分からなかった。答えが分からない中、自分と同じ状況の人たちと話し楽になった」と話す。 鹿児島市のフリースクールに通う新さんの娘は、子ども目線で参加しやすいイベントを昨年9月から開いている。ハロウィーン、たこやき、誕生会などがテーマで、5月には流しそうめんを企画しにぎわった。「子どもがつくるみんなの居場所になれば」と語る。
市教育委員会によると、市内で昨年度、30日以上欠席した小学生は22人、中学生51人で計73人。このうち、市が市民センターに開設している学校に登校できない小中学生のための「レインボー教室」には22人が所属した。 新さんは「『学校に行くのは嫌』という言葉は時に子が自分の命を守るために発する場合もある。生き死にをかけてまで行くところではない」として、「親も子も苦しい。一歩踏み出す場としてカフェを訪ねて」と語る。東さんも「頑張らなくていい場所。じいちゃんの家に来たと思ってくつろいで」と話した。 次回の保護者会は9月29日午後2~3時半。しののめフリースクール(鹿児島市)と連携し、相談にも応じる。カフェやさしい時間=0993(76)1733。
南日本新聞 | 鹿児島