中高年以上だからこそセックスはすべき?「大人の性の教科書」で女性医師が教えてくれること
「セックスはいくつになっても楽しめるもの。そしてセックスができるということは健康な証拠でもあります。アメリカの研究によると週1回以上セックスしている方のほうが死亡率が低く心臓病も少ないことがわかりました。また定期的にセックスをしている方はがんによる死亡率が69%も低いというデータもあります。セックスは健康と密接に関わっています」 【眼からウロコ】驚愕の事実!……女性が最も理想とする「挿入時間」は? そう話すのは現役産婦人科医であり、YouTuberでもあるママ女医ちえこ先生だ。「ミドルエイジ以上の年齢であってもセックスをすることは心身の健康にとって〝とてもいいこと〟」と、彼女はこのたび上梓した『女医が教える大人の性の教科書』(日東書院本社)の中でも語っている。ちえこ先生になぜ中高年でもセックスをすることが心身の健康に良いのか、また中高年男性に訪れる身体の変化やセックスで心がけるべきことなどを聞いた。 ◆中高年男女は性の知識が足りない ちえこ先生が今回この本を執筆した動機は中高年男女にもっと正しい性の知識を知ってほしいという願いがあった。学校などで性について体系的に学ぶ以外、性の知識を得るルートが少なかった中高年世代は、一般的に情報不足だったり知識不足である傾向が強く、それが原因でトラブルになったり、性を楽しみきれていない人が多いのだという。 「外来にいらっしゃる女性でも、自身の性器を見たことがない、触ったこともないという方がいます。また、久々にパートナーができてセックスをしたら『若い頃は大丈夫だったのにものすごく痛い』といって受診された方もいました。 それは女性の年齢の変化とともに起こる自然な現象ですが、広く認知されていません。男性も、女性が『痛いから』とセックスを断ると、自分が拒否された気持ちになってしまう人もいます。そういった知識を男女間で共有ができていなくて、パートナーとの良い関係づくりが難しいのだと思うことがありますね」 そのような加齢による身体の変化に対する知識不足もあってか、日本の中高年男女はセックスをしていない。医療品メーカー・ジェクス㈱の調査によると、男性の場合、1年以上セックスをしていない人は40代で35.9%、50代45.3%、60代62.2%だ。女性にいたっては、40代46.8%、50代65.8%、60代69.4%となっている。しかも婚姻カップルのセックスレスは幅広い年齢で顕著で‘20年には20歳から69歳の婚姻カップルの51.9%がセックスレスだというデータもある。 日本の多くの中高年男女がセックスから遠ざかっている一方で、ちえこ先生の外来に訪れる50~60代の患者さんでも、セックスライフを満喫している人は少なくなく、そういった人は診察していても膣の状態などがまったく違うそうだ。冒頭のコメントのようにセックスは健康である証拠なのだという。 「健康だからセックスをしているのか、それともセックスしているから健康なのか、どちらが先かはなんとも言えない部分もあります。ただ、セックス自体が運動のようなものなので、運動の習慣として寿命が長くなったり、あるいは血圧を下げてくれたり、他にもストレスを軽減する、睡眠の質が良くなるなど健康に寄与していると考えられます。 また、メンタル面では、パートナーとのスキンシップで、オキシトシンやセロトニンといった幸せホルモンが分泌されます。それによってストレスや不安が和らいだり、抑鬱レベルが低くなることがわかっています」 ◆EDにはまず健康問題として向き合うことから 男性の場合、加齢による変化として圧倒的に多いのは、やはりEDだろう。ちえこ先生によれば、EDが原因でセックスに踏み切れない人は、まず健康問題としてEDと向き合うことが大事なのだという。 「中高年に起こるEDの1つの原因として血管の老化があります。陰茎の動脈は体の中にある動脈の中でも特に細くて、直径が約1~2ミリしかありません。たとえ大動脈のような太い血管で動脈硬化の症状が出ていなくても、細い血管のため詰まりやすかったり、血液が流れにくくなります。その症状としてEDが現れてくるということが知られています。まずは自分の生活習慣や食生活を振り返ってみることも必要でしょう。 健康な方であれば陰茎にしっかりと血液が流れ、海綿体に血液が充満して勃起しますが、高血圧や脂質異常症、糖尿病などで血管がボロボロになってしまうと、血流も悪くなります。 また同じく神経の伝達速度が加齢によって下がっていくことで興奮が伝わりにくくなるなど、どんどんEDが進みやすい状態ができてしまいます。EDにはED治療薬を使うのも1つの手です」 また、神経伝達の速度が低下することで以前よりも強い刺激でないと反応できなくなることから起こる遅漏や、筋力の低下から起こる早漏なども、加齢によってみられる症状だそうだ。 「筋力の低下はEDにも関連してきます。筋肉がしっかりと働くことによって射精の基盤になりますが、筋力が衰えてしまうと射精をコントロールできなくなります。早漏やEDは、〝膣トレ〟でお馴染みの骨盤底筋体操、あるいはスクワットなど下半身を鍛えることで改善できます。骨盤底筋体操はED治療薬と同等の効果があるという論文報告もあります」 ◆中高年以上でも楽しめるセックスのかたち 勃たなくなる男性と同様に、女性は加齢によって膣の粘膜が薄くなり弾力がなくなる、濡れにくくなるなどの変化がおきて、挿入すると痛みを感じることが起きるようになる。それ以外にも男女を問わず腰やあちこちの関節が痛くなるという現象だって起こってくる。やはり、若い頃のようにあんなことやこんなことはできなくなるのが現状だ。 『大人の性の教科書』では、そんな悩みを抱えた中高年でも気楽にセックスを楽しむための潤滑剤や体に負担のかかりにくい体位なども紹介している。その中でもちえこ先生が推しているのが「挿入にとらわれないセックス」だ。 「ご説明したように、挿入をゴールにしてしまうとハードルが高いと感じてしまう人も多いのですが、挿入だけがゴールではないとお伝えしています。女性も挿入をすごく求めているかというと、実はそうではありません。挿入時間は5分以下でいいという女性もかなり多いという調査結果もあります。つまりお互いにとって挿入にとらわれすぎないことがウィンウィンにつながるのです」 多くの女性にとってはセックス=挿入ではなく、オキシトシンなどの幸せホルモンも、別に挿入するから出るわけではないというのだ。 「ふたりの仲を深めたり、愛情を確認し合う性的コミュニケーションを目的としたセックスでは、無理に挿入にこだわることは男性が自信を失ってしまったり、女性の性交痛につながりかねません。 セックスで本当に大事なのは前戯です。セックスを一種のコミュニケーションと捉えた場合、前戯は親密さを増すための重要なふれあいです。前戯に時間をかければかけるほど興奮と満足度は増すでしょう。 本書では挿入にとらわれずにセックスを楽しむための『センセート・フォーカス・トレーニング』法を紹介しています。どこをどう触ったら、相手が興奮するのかをお互いに探り合いながら、お互いに性感を高めていく。最後に挿入があってもなくても、そこまでの過程を十分に楽しむことを目指す。挿入が目的のセックスではプロセスでしかなかった前戯を、もっとコミュニケーションを密にして楽しむためのトレーニングです」 確かに〝挿入〟できなかったり、途中で〝中折れ〟してしまったりしても許されるのであれば、セックスに対するハードルは気持ちとしてかなり下がりそうだ。そんなセックスであれば「何歳になっても楽しめる」というのも不可能ではないようにも思える。 「セックスにはもちろん快楽を得るためという面もありますが、それ以上に相手とのコミュニケーションや、自身の心身の健康のためにもなるなど、たくさんのメリットがあります。それをぜひ知ってほしいなと思います」
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