集団的自衛権は徴兵制につながるのか?
戦前の大日本帝国憲法では、兵役は納税とともに国民の義務とされた。が、今の憲法では認められない、というのが現政府の見解だ。安倍首相も、2013年5月15日の参議院予算委員会で、憲法18条を例示しながら「徴兵制度については認められない」とはっきり答弁している。 ところが、自民党は「徴兵制検討を示唆」したと報道されたことがある。民主党に政権を奪われ、野党として冷や飯を食っていた2010年3月、自民党憲法改正推進本部が、憲法改正の論点を公表。この中に、「民主主義国家における兵役義務の意味や軍隊と国民との関係について、さらに詰めた検討を行う必要がある」という記述があった。これを共同通信は「自民党、徴兵制検討を示唆」と報道。当時の大島理森幹事長は「わが党が徴兵制を検討することはない」とのコメントを発表したが、ネットなどで騒ぎとなった。 その後、2012年4月に自民党がまとめた「憲法改正草案」では、9条に「国防軍の保持」をうたったほか、12条に「自由及び権利に責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない」という一文が盛り込まれた。徴兵制、兵役などとはっきり明示しないが、「国を守る」当事者意識を国民に啓発したい意図がにじむ。 徴兵制は、海外ではどうなのだろうか?雑誌「表現者」(2010年11月発行)によると、世界の約170か国のうち、徴兵制があるのは67か国。数字を見る限り、決して珍しい制度ではない。日本でもよく知られているのは、お隣の韓国。国民は、憲法で国防の義務を有する、と定められており、男性は約2年間、陸海空軍のいずれかに属する。同じアジアでは、タイも徴兵制を敷いており、男性は2年間の軍役につかなければならない。 日本では平和国家のイメージが強いスイスも、19~34歳の男性は兵役の義務を負う。ただ、「税金のムダ」などの批判があり、2013年9月22日、男性への徴兵制を廃止するかどうかを問う国民投票が行われたが、廃止に反対が73%を占め、存続が決定している。