杉咲花×若葉竜也『アンメット』6話。大迫(井浦新)の不審な行動
ぐっと増してきた 綾野の存在感
三瓶がまた関東医大に乗り込もうとしたところを、星前(千葉雄大)に代わりに行くよう勧めた津幡(吉瀬美智子)も、それを受けて関東医大の医師・綾野(岡山天音)に探りを入れた星前も、ひとえにミヤビのことが心配だからというだけで動いている。 仕事終わりにミヤビをラーメンに誘う看護師の小春(中村里帆)が「カツカレー食べてんなら日記に書いといてくださいよ!」と気兼ねなく言えるのも、それを森(山谷花純)が咎めるどころか乗っかるのも、ふたりとも記憶障害だろうが関係なくまっすぐにミヤビが好きだから、ただいっしょにご飯を食べたいからだ。 ミヤビのために動くのは、丘陵セントラル病院の仲間だけではない。綾野は会長の孫娘である麻友(生田絵梨花)との政略結婚を受け入れることで実家の病院を救おうとしていた。しかし、結婚してしまえば自分が望んで第一人者にまでなったカテーテル手術から離れなくてはならない。どの道を選んでも応援していると言ってくれた大迫に対してそれなりに恩も信頼も感じているように見えた綾野。しかし、ミヤビを思う仲間からのアプローチを何度も受けた綾野は、「僕も医者だから」と、とうとう大迫が消していた脳波室のデータを復元し、三瓶といっしょに確認する。 これまで、あまり感情が見えなかった綾野。4話ラストで、ミヤビが事故前と同じように缶コーヒーを2つ買ってきたのを見て動揺を見せたことはあったが、おおむね何を考えているのかが読めないキャラクターだった。けれど、麻衣と会っていても大迫とミヤビの件で悩む姿を隠さない。麻衣に「そんなにミヤビちゃんが心配!?」と言われ、予想外の発言に眉根を寄せる。政略結婚のはずだが、麻衣は綾野に思いを寄せているようだし、綾野はここに至るまでそれに気づいていないらしい。6話の綾野はかなり魅力的で、どんどん気になる存在になってきた。
三瓶は大迫に 静かに二度聞く
消されていた動画を確認し、大迫が意図的に記憶障害を作ったと予測する三瓶は大迫に向かって、 「あなたは医者ですか」 と問う。声を荒げることなく、静かに二度聞く。怒りと悲しみがないまぜになったその表情。若葉竜也という役者のすごみを感じるシーンだった。その質問に答えない大迫には、後ろめたさがあるのだろうか。 薬を飲むのをやめた結果、側頭葉てんかんの発作を起こしたミヤビがつぶやいた 「こうすると、影が消えます」 という言葉。それはかつて、三瓶が光を当てると影ができてしまう、なんとか「アンメット=満たされない」をなくすことができないか、と吐露した際にミヤビが答えたものだった。2人の大切な思い出が、ミヤビの奥底に眠っている嬉しさと、それを今は取り出せないやるせなさで顔を覆う三瓶。 自分ではうまく当てられない霧吹きの水を三瓶の寝癖に当てたのも、三瓶が悩む影を消して光を当てたのも、ミヤビだ。三瓶はミヤビの影を消すことができるだろうか。 ●番組情報 『アンメット ある脳外科医の日記』(カンテレ) 脚本:篠﨑絵里子 原作:子鹿ゆずる(作)大槻閑人(作画)『アンメットーある脳外科医の日記ー』(講談社『モーニング』連載) 演出:Yuki Saito、本橋圭太 出演:杉咲花、若葉竜也、岡山天音、生田絵梨花 他 プロデューサー:米田孝、本郷達也 主題歌:あいみょん『会いに行くのに』 FOD、Netflixにて全話配信中(有料) ●釣木文恵 つるき・ふみえ/ライター。名古屋出身。演劇、お笑いなどを中心にインタビューやレビューを執筆。 ●オカヤイヅミ 漫画家・イラストレーター。著書に『いいとしを』『白木蓮はきれいに散らない 』など。この2作品で第26回手塚治虫文化賞を受賞。趣味は自炊。 Edit_Yukiko Arai
GINZA