「極めて異常なこと」 死刑制度の議論進まぬ日本に「国際社会」から厳しい視線…30年でアメリカと「大きな差」も
●死刑制度のあり方を問う
2024年1月25日、アラバマ州で史上初めて、窒素吸入による死刑執行がおこなわれ、その執行の様子は克明に報道されました。アイダホ州では、薬物注射の針を刺すことができずに死刑執行が失敗したことが報じられています。 このような問題が起こるたびに、アメリカでは、死刑制度の是非をめぐる議論がおこなわれています。 しかし、日本では、死刑の運用に関連する記録の公開もおこなわれていません。つまり、死刑という重要な制度の運用が、まったくわからない状況にあるのです。これは極めて異常なことです。説明責任や透明性が不可欠な民主主義社会とは相容れない事態が続いています。 日本の死刑執行の密行性と沈黙は、他国とは比べものにならないくらい極端といえます。このような状況を許しているのは、法律家や報道機関だけでなく、社会そのものです。 現在、静岡地裁では、袴田巌さんの事件の再審公判が進行中です。戦後5件目の死刑冤罪・再審事件に注目が集まる中、死刑制度のあり方を改めて見直すべきだと思います。 (注) (注1)本稿の一部は、「日本の死刑制度について考える懇話会」(https://www.shikeikonwakai.net/)の第1回会議(2024年3月1日開催)における報告をベースにしたものである。 (注2)死刑情報センターによれば、1972年以降に197人の元死刑囚が雪冤されている(https://deathpenaltyinfo.org/policy-issues/innocence)。 【プロフィール】笹倉香奈/ささくら・かな 甲南大学法学部教授(刑事訴訟法)。えん罪被害者の救済をめざす一般財団法人イノセンス・プロジェクト・ジャパン事務局長。SBS検証プロジェクト共同代表。「日本の死刑制度を考える懇話会」委員。