「極めて異常なこと」 死刑制度の議論進まぬ日本に「国際社会」から厳しい視線…30年でアメリカと「大きな差」も
●アメリカ、死刑は「支持されない」刑罰に…
アメリカも、日本と同じように死刑存置国です。しかし、議論の状況には大きな差があります。 実は、アメリカでは、死刑は「支持されない刑罰」になりつつあります。1年間に98人の死刑が執行された1999年以降、その執行数は減少し続け、2023年には24人まで減りました。 死刑制度は、州ごとに異なりますが、廃止州はここ20年で増加し、現在では50州のうち23州が廃止しています。廃止州の数は、今後さらに増加することが予測されます。 さらに、6州では州知事がモラトリアムを宣言しています。つまり、合わせて29州が死刑の廃止または停止をしていることになります。 存置州のうち、死刑を執行しているのはごく一部に過ぎません。過去5年間の執行がないのは廃止州含めて39州で、2023年に死刑を執行したのはアラバマ、フロリダ、ミズーリ、オクラホマ、テキサスの5州のみです。 アメリカの世論調査によると、死刑執行が最も多かった1990年代終わりには、殺人を犯した者への死刑言渡しについて「妥当」と回答する者が80%、「妥当ではない」が16%でした。 しかし、最新の調査(2023年10月)では、「妥当」が53%、「妥当ではない」が44%となり、拮抗しつつあります。 ここ30年でアメリカで死刑が「支持されない刑罰」になりつつある背景には、1990年代以降に多数の冤罪事件が明らかになったこと、そして、その中に多くの死刑事件が含まれていた事実があること(※注2)などが挙げられます。また、以前から、死刑が人種差別的に運用されていることも指摘されてきました。 議論が絶えずおこなわれて見直しがされているアメリカと、議論がなかなか進まない日本との差は大きいといえるでしょう。
●死刑に関する情報に「重大な格差」
アメリカと日本の違いの背景の一つに、死刑に関する情報の取り扱いについての重大な格差があります。 たとえば日本では、死刑に関する情報が秘匿され、公にされません。 いつ、誰が執行されるのかも不明です。本人にさえ当日告知され、その1、2時間後に執行されます。執行に至る手続きについては、一応の規定があるものの(刑事訴訟法472条以下)、具体的にどのようにして執行される人を選定するのかもわかりません。 一方、アメリカでは、遅くとも1カ月前には執行日が告知され、その後、本人へのケアや執行への異議申立ての手続きが進みます。しかも執行日のスケジュールは、ウェブ上で見ることもできます。 また、日本では、死刑の執行方法の詳細も明らかにされていません。1873年(明治6年)に公布された太政官布告第65号(絞罪器械図式)が今でも生きており、そこで定められた絞首刑の方法はほとんど変わらないまま維持されています。 2010年に千葉景子法相(当時)のもとで、東京拘置所の刑場が公開され話題になりましたが、その後、その扉は再び閉ざされました。国民の多くは、刑場で実際に何が起こっているのかを知ることはできません。 アメリカでは、弁護士、司法大臣、検察官、裁判官、裁判所職員のほか、医師や教誨師はもちろん、死刑囚の家族や友人の立会いがほとんどの州で認められています。他にも、被害者遺族や市民の代表、そしてメディアの立会いが認められている州もあります。そのため、死刑執行の詳細を一般市民が知ることができるのです。