「詰まった方が飛ぶ」 交流戦MVP、ソフト柳田の驚愕本塁打論
ソフトバンクの柳田悠岐外野手(26)が20日、交流戦のMVPに選ばれた。今季からMVPの規定として勝ち越したリーグ内の勝率1位チームから選出されることになっているため、勝ち越したパ・リーグで最も高い勝率を残したソフトバンクから、18試合で打率.429、10打点の数字を残した柳田が選出された。 交流戦で強烈なインパクトを残したのは、2本の驚愕アーチである。1本目は5月28日の中日戦。8回、高橋聡のストレートを体がねじきれるような回転で捉えた打球は、なんと天井部分の梁にぶつかって、スタンドイン。そして6月3日の横浜DeNA戦では、1点を追う六回1死に三浦大輔の外角高めに浮いたスライダーを独特のアッパースイングですくいあげると、打球は高く舞い上がったまま失速することなく、スコアボードへ一直線。横浜DeNAのオーダーが映し出された電光掲示板の「3番・石川」の隣付近を直撃。ビジョンの液晶が破壊され、真っ黒な跡が浮かび、場内をどよめきが包んだ。狭いハマスタのバックスクリーンと言えども、推定飛距離150メートルはあったのではないか。 「風が飛ばしてくれました。気持ち良かったです」 確かに高く打ち上がった打球は、強風にも乗ったのかもしれないが、さらに驚かされたのは、柳田が「真芯ではなかった。少し詰まった打球だった」と告白したことだ。 「すこし詰まったほうが打球に角度がついて飛ぶんですよ」 アーチストならではの感覚なのか、それとも、人並み外れたパワーとスイングスピードを持つ柳田独自のバッティング理論なのか。 この日も、日ハム戦で4回に左中間のヤフオクドームに新説されたホームランテラスに14号2ラン。柳田自身が、「詰まってショックだった」というほどのドン詰まりの打球が、ホームランになった。 3度の本塁打王を獲得した同じ左打者の阪神DCの掛布雅之氏に聞くと「正確には詰まっていないんだろうが、詰まったような感触が残ったということだろう。詰まるということは、左手で押し込む時間が長くなるということ。左バッターは、その感覚を持つと、バットにボールが乗っている時間が長くなり、それが角度、飛距離につながる。真芯だとライナーになって角度はつきにくい」ということらしい。 「私も現役時代、少し詰まったという感触があったほうが、打球は飛んだ。私の場合はボールの内側にバットを入れて、バットのヘッドでボールを巻きつけるような感覚で打った。実際は、ゼロコンマ数秒の話だろうが、バットとボールの接触時間を増やし、それによって逆回転のスピンをかけた。柳田は、常識破りのアッパースイングだが、ボールを潰してスピンをかける感覚は同じなんだと思う」