我が人生の宝 熊本・天草の波について
台風のウネリ到来、最高のコンディションに
さてさて今回は友人のミュージシャンでありサーファーのハンちゃんと、新曲の映像撮影も含めて天草を一日だけトリップしました。そしてなんとも幸運なことに、僕らが天草を旅した日、台風のウネリがバッチリ届いているではありませんか。 というわけで撮影はほどほどにね、僕らは自分たちにフィットするブレイクを探して、海沿いの道をひたすら走りました。と言いますかそもそもサーフトリップそれ自体をカメラにおさめる目的の撮影でしたので、最高のコンディションに恵まれたというわけなのです。 夜明け前から車を走らせて、ようやく到着して最初にチェックしたビーチブレイクには、台風らしいとても大きなウネリが入って来ていました。しかしサイズがデカすぎるのと、波の間隔が短いのでアウトに出るのが厳しそうに見えます。 僕ら二人はミッドレングス以上のサイズのボードですから、大きすぎる波のビーチブレイクには不向きです。従って別のポイントを目指し、天草市の南西部から苓北エリアへ舵を切りました。 するとどうでしょう、たまたま誰も入っていない皆さんノーチェックのポイントで、クセはありそうな感じですがかなり良い波が割れているではありませんか。僕とハンちゃんは迷うことなく、早速ウエットスーツに着替えてパドルアウトしました。 沖合いに出てみると、印象としては岸辺で観察していた時よりも太いウネリが入って来ています。人がいなかった上に岸からだいぶ離れているところでブレイクしていた波だったので、遠目では気がつきませんでしたが。 これって波乗りあるあるとでも申しましょうか、入ってみると意外とデカいみたいな、そんなことがよく起こりますので気をつけなければなりません。ちっちゃく見えているけど、入ってみると意外といい波、みたいなね。
「ジン」とくる、台風のウネリ
それから台風のウネリの場合はほんの少しの時間の推移で、海の表情があっという間に変わってしまうのも要注意です。入った当初はおとなしめのミニチュアダックスフンドのような可愛らしい小波だったのが、1時間もしないうちにドーベルマンが如き荒々しいオーバーヘッドクラスの大波に変わってしまうってこともあるくらいです。 サーフィンを始めてまだ日が浅い方は、台風のウネリがポイントに入っている時は、ある程度安全性が保たれているエリアで、経験値の高い方と一緒にトライされる方が無難かと思います。 話を戻しましょう。そのポイントでのサーフィンはロングライドができるような波ではなかったものの、しっかりとしたウネリに一定の緊張感を持ってチャージしつつ、広いフェイスを気持ちよく走ることができました。そして有難いことに僕ら二人の貸切りだったので、海の上でこれ以上無い開放感にどっぷりと浸ることができたのです。 波のボトムやフェイスを走る時、台風のウネリは他の風で生み出された波と比べて、パワーというか質感が全く違うと思います。 大自然の豪快なエネルギーが波の一本一本に凝縮されていてね、テイクオフした瞬間足元から伝わってくるなんとも言えない「ジン」とくる感触があるのです。そしてその感触は、しばらく自分の体に忘れ難い記憶として刻まれるのです。まるで名小説家が時々書き記す見事な比喩のように。