実家を売却したが、その所得税額に呆然…譲渡所得を小さくし税を軽減させる特例とは【相続専門税理士が解説】
相続税を支払って不動産を相続したが、不要なため売却したい…。ところが、さらに売却にともなう所得税の支払いも必要になると聞けば、税負担の大きさに呆然としてしまうでしょう。支払った相続税の金額に応じて所得税額が安くなる「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」があるのをご存じでしょうか。相続専門税理士の岸田康雄氏がやさしく解説していきます。 【早見表】年金に頼らず「夫婦で100歳まで生きる」ための貯蓄額
相続した実家を売った利益に、所得税が…
不動産は「安く買って高く売る」ことでお金を儲けられますが、相続した実家を売って儲けが出た場合も「所得税」がかかります。 売った金額から買った金額を差し引くことで「儲かった金額」が計算できます。これを「譲渡所得」といい、譲渡所得に20%をかけた金額が、所得税と住民税の合計です。 しかしながら、先祖代々保有していた不動産などの場合、売買契約書が残されておらず、購入金額が不明というケースもよくあります。購入金額が分からない場合は、売却した金額の5%を「買った金額」と仮定して計算します。 しかし、それでは「売った金額の95%が儲け」とみなされ、多額の税金がかかってしまいます。相続税を支払ったうえ、譲渡所得へ多額の課税をされたら、まさに往復ビンタで涙目です。 そのような場合、相続した不動産を売却したときに所得税を安くできる特例がありますので、よく覚えておきましょう。 その特例とは「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」という2つですが、今回は、「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」について見ていきたいと思います。
「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」とは?
「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」とは、相続によって取得した土地や建物、株式などの相続財産を、3年10ヵ月以内に売った場合、それを相続するときに支払った相続税を、売ったときの譲渡所得から減額してくれる制度です。 具体的には、その財産を買ったときの金額(取得費)に相続税の金額を加算します。それにより譲渡所得が小さくなり、税金が安くなるのです。 なお、「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」を適用するためには、次の4つの要件を満たしている必要があります。 (1)相続または遺贈により財産を取得した人であること (2)相続税が課された人であること (3)その財産を相続発生から3年10ヵ月以内に売ったこと (4)確定申告すること この特例は、先述したもうひとつの特例「相続した空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除の特例」とは併用できません。いずれの選択が有利になるのか、事前によく検討するようにしましょう。