朝ドラ『虎に翼』脚本家吉田恵里香さん語る「描きたい寅子像と主演伊藤沙莉さん」|VERY
── 脚本家、作家として憧れる方はいますか? 岡田惠和さん、坂元裕二さん、渡辺あやさんの書く映画やドラマは大好きですし、脚本家としても尊敬しています。向田邦子さんや小説家の川上弘美さんの作品も愛読しています。この人にしか書けない唯一無二の台詞やストーリーを生み出せること。そして長きにわたって書き続けることは本当に素晴らしいですし、なかなかできることではないと思います。私もそういう作家を目指したいです。
「産みましたけど何か?」くらいの気持ちで産後復帰したかったけれど…
── 吉田さん自身は産休・育休を取らず、出産後すぐに仕事をはじめたそうですね。 そうなんです。子どもを産んだ日の夜からパソコンに向かっていた記憶があります。今思えば産後はきちんと休むことも重要だと思いますが、当時は妊娠・出産で仕事にブランクができると“吉田へ依頼するのはもうやめておこう”と思われるのではないかととにかく怖かったんです。「産みましたけど何か?」くらいの気持ちで何事もなかったかのように復帰したいという思いがありました。やってみるとかなりしんどいことでしたが……。 ──どんなときに、しんどさを感じました? 産後2か月くらいはいざ仕事をしようにも全然頭が回らなくて、母に息子を見てもらってパソコンの前に座っても、一文字も書けなかった時期がありました。だから結果的に、あきらめてきたことばかりです。仕事柄、本を読んだり舞台を見に行ったりとインプットが大切だと思うけれどとても時間がない。今はあきらめよう。そう自分に言い聞かせてきました。すべてに手が回らないからとにかくあきらめの作業の連続です。でも、仕事はどうしても続けたかったんです。あくまで“私の場合は”ですが、もし子どものために仕事をセーブして自分の思うようなキャリアが積めていなかったとしたら、息子のせいにしてしまう気がしたんです。時間は有限だから、子育てと仕事のキャパを最大限に取った残りでできることをする。できないことは潔くあきらめることを許容したら、息子にも仕事にも納得できる向き合い方ができるようになりました。 ──子育てにおいて、周りに頼ることはありますか? 夫は一言で言えばピーターパンのような自由で面白い人です(笑)。育児をする上では夫はもちろんとして、母や兄夫婦の助けがとても大きいです。私がどうしてもお迎えに行けない時には、兄夫婦が行ってくれたり、平日は母が子どもの夕飯を作ってくれたり。実家で栄養満点のごはんを食べてきてくれるから、おやつにラムネを食べよう、たまにはピザにしちゃおうか!なんて無理せずに気楽に考えられるんだと思います。3か月程前から、息子が私と離れてお留守番ができるようになったことも仕事をする上では大きいですね。 とはいえ、周囲に頼りきりで自分では息子のことが何もできなかったと思う日は正直落ち込みます。でも、子ども目線で見たときに楽しかったかどうかを大事にしたいから、どうしても芽生える罪悪感はいったん置いておくことにしているんです。