いま、投資すべき銘柄の判断に役立つ J-REITの評価指標を理解しよう
日本版不動産投資信託(J-REIT)の投資を考える際、参考となる評価指標には、どのようなものがあるのでしょうか? 株式投資に使われる指標を例に、J-REITの評価指標の種類や意味、特徴についてミリタス・フィナンシャル・コンサルティングの田渕直也さんが解説していきます。
PERとFFO倍率
一般の株式の評価指標としてもっともよく用いられるものにPER(Price Earnings Ratio、株価収益率)というものがあります。 企業が生み出す税引後の利益(当期利益または純利益)は、一部が配当として株主に支払われ、残りは内部留保として会社の中にとどまります。内部留保分は株主に直接還元されないわけですが、その分自己資本が増加することになります。自己資本は、株主持分ともいわれ、企業の価値のうち株主に帰属する部分を表します。つまり、配当として支払われるか、内部留保として株主持分の増加に反映されるかの違いはありますが、いずれにしろ純利益は株主価値の増加につながるわけです。 その純利益に対して、株価がどのくらいの倍率で取引されているかを見るのがPERです。 PER = 株価 ÷ EPS(一株当たりの純利益) ※EPSは純利益額を発行済み株式数で割った値 PERは、要するに、株主価値の源泉である純利益に対する株価の割高さを測る指標であり、一般にはPERが高ければ株価は割高、PERが低ければ割安と判断されます。 ただし、将来の利益成長が期待される銘柄は人気が集まってPERが高くなり、逆に業績不安が大きい銘柄は人気が離散してPERが低くなるという側面もあります。つまり、PERはその銘柄に対する投資家の人気の度合いを示すものでもあるのです。 PERは、もちろんJ-REITの評価にも使うことが可能ですが、J-REITの場合、似た指標でFFO倍率というものが使われることがよくあります。 FFO(Funds From Operation)は、純利益に減価償却費を足し戻し、さらに物件の売買損益を除いたものです。 不動産の場合は、建物の評価額に対して、決算のたびに減価償却という会計上の損失を計上します。建物の価値が経年に伴って減少すると考えるわけですね。ただ、これはあくまでも会計上の費用なので、実際に資金の流出を伴う費用ではありません。そこで、減価償却費を足し戻して減価償却前の利益額に戻すことで、資金の流出入を伴うリアルな損益(これをキャッシュフローといいます)を捉えようとするわけです。また、物件の売買損益を除いているのは、それがそのときの不動産市況に大きく左右されるものだからです。 つまりFFOは、会計上の損失と、相場に影響される売買損益を除いて、日常的な業務から生まれるキャッシュフローベースの利益を表すものとなります。そして、一株当たりのFFOに対して株価が何倍かを計算したものがFFO倍率です。FFO倍率は、相場の環境にもよりますが、おおむね15倍前後が平均的な水準と考えられています。