あえてディーゼルエンジンという選択。三菱から登場した新型トライトンに乗ってわかった走る楽しさの本質
対角車輪が完全に浮き激しく空転するモーグル(こぶ)路面では、ローギア直結でセンターデフがロックされる「4LLc」モードに、ドライブモードは「マッド」モードを選択。これまでの走破性能から必要ないと思われたが、さらに後輪デフロックスイッチもオンにしてトライトンの「最強駆動モード」で臨んだ。 すると、1mはあろうかと思しき連続する小山を、クリープ走行+少しのアクセル操作だけで難なくクリアした。試しに降車してモーグル路面を歩いてみたが、すぐさま足をとられるほど。トライトンはそこをあっさりとクリアした。
電動パワーステアリングの効果も高い。路面の凹凸を通過する際、ステアリングには反力(キックバック)が加わるが、その入力が穏やかでドライバーのステアリング操作を邪魔しない。ここは2019年2月の大幅マイナーチェンジで油圧→電動へとパワーステアリング方式の機構を変更した同社のミニバンSUV「デリカD:5」でも実感した部分だ。 一般道路にコースを移す。ここでは前席以上に、後席での乗り心地に感心した。トライトンは前輪サスペンションに優れた接地性能を誇るダブルウイッシュボーン形式を、後輪サスペンションには重量物への耐性が高いリーフ形式を採用している(日本向けトライトンの最大積載量は500kg)。
ポイントはリーフ(板バネ)の枚数で、このクラスで一般的な5枚方式ではなくトライトンでは3枚方式を採用した点。構造的に路面の外乱や車体に加わる力で後輪の位置決めが難しいとされるリーフ形式ながら、トライトンは板バネ自体をスムーズに動く構造として乗り心地を確保しつつ、シャックルと呼ばれる車体との取り付け部位をトライトン専用に開発して、安定した積載性能と優れた悪路走破性能の両立を図った。 ■新開発となるディーゼルエンジンの実力は?
さらにトライトンでは直列4気筒2.4Lディーゼルターボエンジン「4N16型」を新規開発し、国内市場においては6速ATと組み合わせる。電動化うんぬんの時代に新開発のディーゼルエンジン? と疑問符が付きそうだが、電動化は適材適所で進めるとCO2削減効果が高いことが世界的にも実証されている。2009年7月、世界に先駆けて軽自動車のBEV「i-MiEV」を発売した三菱だからこそ、その信憑性は高い。 4N16型のカタログスペックは、最高出力204PS/3500回転、最大トルク値470N・mは1500~2750回転。このうち特筆すべきは低速トルクで、それこそアイドリング直上の1000回転前半から300N・m程度のトルクがある。よって、オフロードコースの急斜面ではトルクコンバーターのトルク増幅効果も加わって、回転を高めずとも静かに力強く上っていったのだ。