PK戦で3人連続失敗のなでしこ、パリ五輪までに克服すべき課題
試合開始わずか30秒で清家貴子が右45度から攻め入ってシュートをするとゴール奥の左のポストに当たってゴールイン。アメリカを応援する大観衆の前で簡単ではないシュートを決めたのだからド肝を抜くのには十分な先制攻撃であったが、これがアメリカ選手たちの闘争心に火を付けた。 日本は攻め入って追加点を狙うべきところだが、そのような姿勢は感じられなかった。信じられないことだが、相手がプレッシャーに来ているわけでもないのにDFが自分の後ろのGKにバックパスする光景が何度も見られた。 バックパスは攻め入るときに必要な場面もあるのだが、相手が来ていないのにDFがGKにパスをするのは無用である。なにより相手に攻め入る時間を与えているのと一緒である。ボールキープに自信がないから、自ら打開しようという意識にならず、とりあえず安心な後ろにパスを出す判断をしているのだろう。これは敵から見れば、何の脅威も感じない。 ■ 不可解なバックパスの多用 アメリカ戦でバックパスが目立ったのは南萌華やキャプテンを任された熊谷紗希のDF陣だ。ボランチで使われることが多い守屋都弥も、この日は左SBに起用されて何度かピンチを救っていたがそれはあくまで結果論でしかない。彼女もバックパスを多用していた。 特に目立っていたのが右のSBの清水梨紗だ。清水にボールが渡ったら必ずバックパスするのではないかと思えるほどだった。 前の選手がパスコースに走り込めないことを原因と見る人もいるかも知れないが、そうではなく、自分から前に出てパスを出すことが肝心だ。スペースに走り込むことをしなければ攻撃にならない。バックパスの悪弊は徹底的に直さなければない。
■ 先制しながら逆転負け さてゲームの方だが、アメリカのプレッシャーを受け続けたなでしこはなんとかゴールを割られないように守り続けた。いや、アメリカの雑なシュートにも何度も救われていたというべきか。 それでもアメリカはサイドを使った多彩な攻めを繰り返してきた。そしてついに20分、ゴール正面からミドルシュートを決められて同点にされてしまった。 なでしこは選手同士の位置が良くなかった。DFとボランチの長谷川・長野の距離が遠すぎてパスをカットされる場面も多かった。長谷川は何とかパスを前線に出そうと頑張るが、そのパスもチェックをされていたので効果的な攻めができず、もどかしいプレーが続いてしまった。 相手からすれば司令塔の長谷川を抑えるのが効果的であるから彼女へのマークをきつくするのは当然のことであるが、それでも長谷川は精いっぱいのプレーを見せた。ただ後半になってもなでしこのバックパスは収まらず、面白い試合にならない。そして後半、交代で入った杉田妃和が20分にペナルティーエリア内で相手選手と接触して転ばれてしまいPKを献上、それを決められ1-2で敗れることになった。 杉田がPKを与えた相手選手の“演技力”が勝っていたとも言えるが、あの場面で杉田が足を出す必要があったのかどうかも再検討して今後に生かすべきだろう。 アメリカとの点差は1点差だったが、相手選手のシュートの精度が良ければもっと点差は開いていたはずだ。それくらいなでしこが押されていた内容だった。