イーロン・マスク曰く「OpenAI、オープンじゃないからお金返して」
OpenAI創業におけるマスク氏の役割
マスク氏の弁護士は、彼がOpenAIの設立と資金確保に果たした役割を強調しています。訴状によれば、アルトマン氏は2015年にマスク氏に接近し、当時AI開発をリードしていたGoogle(グーグル)のDeepMindに並ぶようなAI研究所の立ち上げを持ちかけました。 そしてOpenAIのプレジデントとなったグレッグ・ブロックマン氏とともに、非営利企業としてOpenAIを立ち上げたのです。 マスク氏は「OpenAI」という名前も選び、2016年には1500万ドル(約22.5億円)の資金を与え、サンフランシスコの初期のオフィス代も支払いました。当時GoogleにいたIlya Sutskever氏を引き抜いてOpenAIのチーフサイエンティストにした際も、中心的役割を担いました。マスク氏が提供した資金は、累計で4400万ドル(約66億円)を超えます。 マスク氏いわく、彼がOpenAIに寄付をしたのは、アルトマン氏が「OpenAIは非営利にする」と言っていたからでした。訴状によれば、2017年にはブロックマン氏などがマスク氏に営利化を提案していたのですが、マスク氏が却下したとのこと。 「(ブロックマン氏らが)勝手に何かするか、非営利のOpenAIとして続けるかそのどちらかだ」と当時マスク氏は言ったそうです。 私は君たちが今まで通りでいることに強くコミットするまで、OpenAIに資金提供しない。そうでなきゃ、私はスタートアップにタダで資金提供するバカでしかなくなってしまう。議論は終わりだ。 アルトマン氏もマスク氏に同調したとされ、「これからも非営利組織がすごくいいと思う」と言ったそうです。でもマスク氏は2018年に共同チェアマンの座を降り、プロジェクト自体から抜けてはいないものの、寄付のペースを落としました。その後2019年、OpenAIが非営利部門の設立に動いたのです。
お金は返してもらえるかは微妙
マスク氏はOpenAIとアルトマン氏が契約違反と受託者責任違反を犯したと主張しています。彼は裁判所に対し、OpenAIにGPT-4内部の仕組みを含む技術や研究成果を公開させるように訴えています。彼はまた、OpenAIが今後利益を出すことの禁止と、彼がOpenAIに対して寄付した4400万ドル(約66億円)の返還を求めています。 米GizmodoはOpenAIとMicrosoftにコメントを求めましたが、期限内に回答はありませんでした。 ノースキャロライナ大学の法学教授、Deborah Gerhardt氏は米Gizmodoのメール取材に対し、マスク氏の訴えは、OpenAIの組織や風評に対しある程度の損失を与えうると言っています。でもGerhardt氏は、マスク氏が彼の寄付が特定の行為により無効化されるかどうかは不明だと言いました。つまり、OpenAIが傘下に営利企業を作ったからといって、寄付の返還義務が生じるかどうかはわからないということです。 「どんなAIがOpenAIの使命をよりよく実現できるか」という課題に関し、なぜOpenAIの内部者よりマスク氏のほうがよい判断ができると彼が考えているかがわかりません。 通常、非営利団体に資金を寄付する人は、その団体の使命の進め方について、細かいところまで管理できないのが普通なんです。 とGerhardt氏は言います。 別の訴訟では、8兆円相当の報酬をストップされてしまったマスク氏なので、66億円くらい返してもらえなくても誤差の範囲かもしれません。金額が大きすぎてわかりにくいですが、1億分の1してみると、8万円もらいそこねた後に、他の人から66円を取り返そうとするようなものです。 それより、自分が立ち上げたOpenAIの成果を、自身のAI企業のxAIとかNeuralinkとか、他の組織でも自由に使いたいよってことなのかな。
福田ミホ