ドタバタ最低賃金 後出しジャンケンとランチの法則 安藤政明の一筆両断
最低賃金は令和3年から毎年「過去最高の引き上げ」の記録が塗り替えられ続けています。6年も7月25日に、中央審議会が前年+50円という「過去最高」の目安額を示しました。 目安額が決まれば、引き続き各都道府県での審議です。審議は都道府県によって事情が異なります。シャンシャン都府県もあれば、ドタバタ県も。都道府県は大きくABC3ランクに区分されています。ざっくり「高中低」を意味します。 Aランクは東京・神奈川・大阪・埼玉・愛知・千葉の6都府県。5年最低賃金は1113円(全国最高・東京都)~1026円。Cランクは岩手・沖縄・秋田など13県。福岡を除く九州各県はすべてCランクです。5年は893円(全国最低・岩手県)~900円。A・Cランクのいずれにも含まれない道府県はすべてBランク。5年は896円~1008円。Bランクでも徳島県896円は沖縄県とともに全国で下から2番目です。 今回特に注目されたのが、全国最低額の岩手県と2番目の徳島県です。全国最低額から脱出できるか、それと「いつになったら決まるのか」というような注目でした。 Aランクは6都府県とも目安額50円ですぐに決定。余裕です。最高額は東京1163円。BCランクは、8月5日に決定的な動きがありました。全国下から4位タイの秋田が、前年+54円・951円としたのです。秋田は早まってしまいました。BCランクの他県の「有り難い目安額」を示したのです。この時点で「意地でも952円以上に」とひそかに決意した県が多かったことでしょう。秋田が6年の最低賃金最低額となることが決まった瞬間だったとも言えるでしょう。 予想どおり、その後「秋田県+1円の952円、+2円の953円」での答申が続出しました。熊本・宮崎・沖縄・高知(952円)、青森・鹿児島・長崎(953円)で、いずれも前年+54円~56円です。後出しジャンケンだから、絶対に負けません。少しずるいけど。 なかでも今年の後出しジャンケンの猛者は、全国最低額からの脱出を狙う岩手とBランクなのに下から2番目の徳島でした。岩手は8月28日まで粘り「秋田+1円」の前年+59円・952円で全国最低額から脱出。後出しジャンケン日本一は徳島。8月29日までもつれ、前年+84円(増額日本一)・980円となりました。+84円は驚きです。月170時間で月額1万4280円もの大増額で、四国最高額に躍り出ました。香川県民の取り込み狙いもあるのでしょう。しかし、最低賃金スレスレの事業所の今後が心配です…。