ドクターストップで夢破れた元AKB候補生がセカンドキャリアで輝くまで【バーテンダー・小栗絵里加(前編)】
アイドルの厳しいお財布事情
アイドルを目指す日々は充実していたものの、とにかくお金に困った。当時、一番月収が良かった月で稼ぎは15万円ほど。都内で一人暮らしをするためには、芸能関係の仕事だけでは生活ができなかった。 「それで、時間の融通が利きやすいバーのアルバイトを始めました。面接では『アイドルのお仕事をやりたいので、シフトで迷惑をかけてしまうかもしれないです』と伝えましたね。お店からは『昼も夜も働けますね?』って言われて、『働きます!』って答えました(笑)。迷惑をかけてしまうのはわかっていましたし、働き口を見つけるので必死でした」
勤勉な小栗さんは、社員並の仕事をこなす“できるバイト”だった。加えてその頃、秋葉原のAKB劇場に併設されたカフェスペース『48'S Café』で働いており、そこでも『店長』というあだ名がつくほどよく働いた。AKB候補生としてまず顔を覚えてもらうことが、アイドルへの第一歩になると考えたからだ。 「同期に元AKB48の篠田麻里子さんがいて、一緒にアイドルの夢を追いかけていました。彼女がAKBの1期生に決まった時はすごくうれしい反面、『取り残されてしまう』っていう焦りがありました。彼女の背中を追いかけたい気持ちもあって、AKBの2期生オーディションを受けました」
勝負をかけたオーディションになったものの、結果は無残にも一次審査落ち。メンタル的なダメージも大きかった。 「がんばる方向性を間違えたのかなって思って、すごく落ち込みました。なんで落ちたんだろうって頭の中を考えがぐるぐるしたんですけど、ここで引きずっても仕方ないと思って、事務所を変えて再スタートを切りました」 舞台稽古やパチスロアイドルなどの仕事に精を出す一方で、バーでのバイトもしっかりこなした。睡眠時間を削りつつ充実した日々を送るも、体はすでに悲鳴を上げていた。 「寝る時間を削れば何でもできる。もっといろいろなことに挑戦したいと思っていた矢先だったので、倒れた時は頭が真っ白でした。自分もう歳なのかなって。入院してベッドから動けなくなって、生活費どうしようとか考えていました」 ドクターストップに打ちひしがれる小栗さんだったが、このトラブルが新たなキャリアのきっかけになった。 (後編に続く) 小栗絵里加(おぐり・えりか) 『Bar Algernon Sinfonia』オーナーバーテンダー。2017年には女性バーテンダー日本一を決める『なでしこカップ』で優勝した経歴を持つ。“夏が一番似合う男性・女性を決める”がテーマのボディコンテスト『SUMMER STYLE AWARD』では2023年のデビュー戦でクラス三冠を達成、年間の集大成である『JAPAN PRO GRAND PRIX』ではクラス4位の成績を収めた。
取材・文・写真/森本雄大 写真提供/小栗絵里加