散り散りになっていくのは「安倍派だけ」…岸田総理の「派閥解散宣言」に秘められた「セコすぎる計算」
「宏池会(岸田派)を解散することを検討している」 1月18日、岸田文雄総理(66)の突然の派閥解散宣言は波紋を広げた。翌19日には雪崩を打つように二階派(38人)、安倍派(96人)も派閥解散を宣言し、自民党内6つの派閥の半数の3つがわずか2日で解散する方針となった。 【独占入手】やっぱりあった!岸田首相「大ハシャギ公邸忘年会」に寝間着&裸足で参加「ご満悦写真」 「総理は宣言の直前、派閥幹部を官邸の裏口から集め、林芳正官房長官(63)や村井英樹官房副長官(43)を伴い、『攻めるために宏池会を解散したい』と伝えたようです。『この先はどうなるか、俺もわからん』とも漏らしているように、政局は流動化するでしょう」(全国紙政治部記者) 麻生太郎副総裁(83)や茂木敏充幹事長(68)にも事前協議もしておらず、派閥存続を示す麻生氏は激怒。党内第四派閥の岸田派(46人)は第二派閥の麻生派(56人)と第三派閥の茂木派(53人)の支えで政権運営を担ってきた。 「21日にホテルオークラの日本料理屋『山里』で麻生氏と2時間の会食をし、総理から『事前の連絡もなく申し訳ございません』と先に頭を下げ、麻生氏がそれを受け入れることで和解を演出。が、麻生氏は『これまで岸田政権を支えてきたのは派閥の力ですよ』と派閥の有用性を訴えて、自派閥存続することも伝えており、政権運営が不透明な状況」(同記者) 26日にも予定されている、自民党政治刷新本部の中間報告を待たずに「岸田派の解散宣言」の背景には何があるのだろうか。 「支持率低迷の中、乾坤一擲の勝負に出た」 岸田派中堅議員は興奮を隠さずにそう語り、こう続けた。 「会見直前、先輩議員からの携帯電話の連絡で解散宣言を知りました。まずそこで驚き、他派閥に根回しもしていないことでさらに驚きましたが、(岸田前)会長は勝負に出た。支持率回復の一手として、北朝鮮との拉致問題で水面下の交渉をしている。 能登半島地震で金正恩総書記(40)からお見舞いのメッセージが出るなど交渉は進んでいるでしょうが、外交は相手の思惑もあるので主体的に動けない。だが、派閥解散は会長の判断でできる。他派閥よりも先に解散を打ち上げることで、イニシアチブを握れる。政治不信を払拭するために率先して動いた、と世論を味方につけることができるのではないか」 解散宣言後、永田町の雰囲気は一変。19日、安倍派の臨時総会後の会見で、座長を務める塩谷立氏(73)は、岸田派解散の影響が安倍派解散にあったか、との問いかけに「ある程度、影響があったと思う。あれで加速化したと思う」と述べた。 「5人衆(世耕 弘成前参院幹事長、萩生田 光一前政調会長、松野 博一前官房長官、西村 康稔前経産相、高木 毅前国対委員長)が互いに譲らずに足を引っ張りあったことで招いた結果ともいえる」 安倍派参議院議員はそう指摘し、こう続けた。 「政治団体としての届け出を取り下げることで、政治団体ではなくなる。政治団体ではないので政治資金パーティーも開催できず、派閥としてカネ集めもできなくなる。 所属議員はしばらく様子見をするでしょうが、カネもポストも差配できないことは自明で、櫛の歯が欠けたような状況となろう。5人衆を中心とした小さなグループが生まれ、分裂していくでしょう」 96人を誇る自民党最大派閥も風前の灯となろうか。また元に戻る、と前述の岸田派議員が指摘し、こう語る。 「派閥を解散しても人は自然と集まってくる。岸田派は結束力が強いので政策グループとなっても欠けることはない。会長は解散を打ち出してもバラバラにはならない。その自信があるからこそ真っ先に解散宣言ができた。 二階派も二階俊博会長(84)が元気な限り、結束していける。二階会長は独自の嗅覚で政局を読み、解散宣言に乗った。数年後、派閥が復活した際、散り散りとなっているのは安倍派のみ」 ’88年のリクルート事件で当時の派閥領袖らが未公開株を譲渡され、政治とカネによる政治不信を招いた自民党は’89年に政治改革大綱で「派閥の弊害除去と解消への決意」を明記した。しかし、明記しただけで実行されずに終わってしまった。 また’93年に野党に転落すると派閥改革を掲げ、’94年に党改革実行本部が「派閥の名称は使わない」として各派閥事務所を閉鎖した歴史がある。 かように’80年代から繰り返して派閥不要論が生まれるも、「育成機関として必要」「政策集団だ」などと結局、形を変えながら存在し続けた。 前述の安倍派参議院議員はこう述べる。 「清和会の栄華は潰えたが、派閥は自民党の力の源泉だから、いずれどこかの時点で派閥は復活する」 岸田総理は自派閥の結束力に自信を持った結果の派閥解散宣言。安倍派は潰せたものの、他派閥からの反発で政権運営は不透明なままだ。 取材・文:岩崎 大輔
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