「町工場からグローバル企業に」 ダイキンは北米市場トップも視野、脱カリスマ成功なるか
今年10月に創業100周年を迎えるダイキン工業は21日、大阪市内で創業100周年記念式典を開いた。2023年度には売上高が初めて4兆円を超え、悲願だった北米市場のトップシェアも射程圏に入る。一方で、ダイキンを世界一の空調メーカーに押し上げた井上礼之(のりゆき)会長は6月で退任する予定で、第一線から退く。脱カリスマに成功し、これまでの成長を維持できるかが課題となる。 「町工場からグローバル企業に変貌し、隔世の感を覚えている」 井上氏は21日の式典に登壇し、こう感慨を口にした。ダイキンは1924年に創業。飛行機用のラジエーターチューブなどを生産する傍ら、34年に冷凍機の試作に成功、その後、空調事業に軸足を移していった。現在は世界に125カ所の生産拠点があり、グループの従業員数は約10万人にのぼる。 ただ、井上氏が社長に就任する直前の1994年3月期の売上高は3708億円。まだ規模は今と比べて大きくなかった。変化の契機となったのは、2006年にマレーシア空調大手のOYLインダストリーズを約2400億円で買収したことだ。12年には米グッドマン・グローバルを約2960億円で買収し、海外での事業拡大の橋頭保(きょうとうほ)とした。 とくに北米は1981年の初進出以来、2度の撤退を余儀なくされている因縁の地であり、世界最大の市場をいかにおさえるかは重要な課題だった。井上氏が進めた積極的なM&A(企業の合併・買収)によって、ダイキンの業績は急上昇し、2010年には空調事業での売上高世界一を達成。24年3月期には売上高4兆3953億円となり、30年で約12倍に拡大した。米州(大半が米国)での売上高も1兆5759億円と順調に拡大しており、21日の創業100周年記念式典で十河政則社長は「長年の夢であった北米ナンバーワンも手中に収まりつつある」などと力を込めた。6月に会長に就任する十河氏は、次期社長の竹中直文氏とともに、北米市場でさらなる成長を目指す。 ダイキンの新たな挑戦を見据え、井上氏は「次の100年に向けて何を生業にして稼ぐのか、世の中にどんな価値を提供していくかを決断し、実行しなければならない」と語った。(桑島浩任)