2020年経済「4つのキーワード」 米大統領選に五輪、日銀がデジタル通貨も?
2020年が幕を開けました。今年の日本や世界の経済を展望するする上でのキーワードは何か。第一生命経済研究所・藤代宏一主任エコノミストに寄稿してもらいました。 【グラフ】消費増税のダメージは想定以上? 個人消費に見える弱さ
【アメリカ大統領選】
11月3日の大統領選は年明けから話題になりそうです。選挙は何が起こるか分かりませんが、現在のところ現職のトランプ大統領が勝利して、もう4年続投するとの予想が多いように思えます。 トランプ大統領については、その言動や品格が色々と言われていますが、経済政策に関しては一定の評価を得ているようです。就任当初、矢継ぎ早に実施した大型減税が奏功したこともあり、失業率は約50年ぶり低水準に低下し、なおかつ株価も好調です。経済状況を見る限り、米国民の不満がトランプ大統領に向かう可能性は低そうです。これは大統領の支持率が安定している大きな理由の一つでしょう。 ちなみにトランプ大統領が選挙で負ければ、中国との貿易戦争が終わり、世界経済、日本経済にプラスとの見方があるようですが、実のところ、中国に対する強硬姿勢は米議会で民主党と共和党が一致している数少ない政策テーマです。したがって、大統領選の結果がどちらに転んでも、貿易戦争が終わるとは考えにくいです。
【5G次世代通信規格】
2020年にスタートし、完全に整備されれば、高速・大容量の通信が可能になります。経済への影響という点では、5G対応のスマホ、PC、タブレットの需要はもちろん、基地局などの通信設備に巨額の資金が投じられるため、そのこと自体が景気にプラスに効きます。また、自動運転やAI(人工知能)の普及にも不可欠なインフラの一つですから、中長期の技術革新を促す要素として重要な意味を持ちます。一般的な解説では「映画のダウンロードが一瞬でできる」というスマホユーザー目線が専ら注目されている印象ですが、本質はそこではありません。
【東京オリンピック】
水を差すつもりはありませんが、オリンピックの経済効果は2020年に小さくなる可能性があります。なぜなら、オリンピックの景気刺激効果が最も強く出る建設関連の需要は通常、開催の2年前にピークが来るからです。これは新国立競技場が既に完成しているという事実からも明らかですが、工期が順調に進捗した場合、オリンピックイヤーには景気の直接的な押し上げ効果が逓減します。 現在、オリンピックの景気を肌で感じていないなら、終了後の反動も小さいはずです。したがって、オリンピックの景気刺激効果は良くも悪くもその程度なのですが、「オリンピックが終わってしまった」といった心理的不安が実際の景気を悪くさせてしまう可能性には注意が必要です。