2020年経済「4つのキーワード」 米大統領選に五輪、日銀がデジタル通貨も?
【デジタル通貨】
「ビットコイン」や「〇〇コイン」といった仮想通貨(クリプトアセット)を思い浮かべる方も多いと思いますが、2020年はフェイスブックが主体となって発行が計画されている「リブラ」に注目する必要があります。ビットコインに代表される投機対象としての性格が強い従来型の仮想通貨との決定的な違いは、その価値がドル、ユーロ、ポンド、円で構成される通貨バスケットに連動するように設計されている点です。ビットコインのように短期間で2倍になったりすることがないため、通貨として最も重要な決済機能を有することが想定されます。 世界共通の通貨とも言えるリブラは、(1)スマートフォンさえあれば銀行口座を持たない人でも金融サービスにアクセスできる、(2)海外送金が割安にできる、といったメリットがあり、特に(1)のメリットが大きい新興国では爆発的に普及する可能性があります。民間企業(団体)が発行するデジタル通貨が、各国政府・中央銀行が発行する法定通貨(紙幣と硬貨)の補完的な役割を果たしたり、或いはそれを駆逐する勢いで広がったりすれば、そのインパクトは甚大です。 当初、2020年が予定されていたリブラの発行計画は、米国内における規制対応などの理由から、現在のところ具体的な発行時期は明示されていません。しかしながら、近い将来何らかの動きがあることは間違いなく、仮に彼らの思惑通りにいくとすれば、2020年中の発行が実現します。 そうした中で幾つかの中央銀行は、デジタル通貨発行の検討段階に入っています。既存の法定通貨が抱える弱点――(1)管理コストの大きさ、(2)犯罪・脱税に絡むマネーロンダリング対策の難しさ――を克服する目的に加え、リブラに遅れまいとする動機もあるようです。仮にリブラなどの民間デジタル通貨が爆発的に普及すれば、既存の金融システムに予期せぬ悪影響を与える可能性があるため、それに先んじて自国のデジタル通貨を発行することで、自国通貨の存在および金融システムを守ろうという動きです。 現在、中国の中央銀行にあたる中国人民銀行がデジタル通貨の発行を検討しているほか、キャッシュレス決済で先行しているスウェーデンは試験的発行が近づいているようです。またここへ来て、ECB(欧州中央銀行)もデジタル通貨の研究を本格的に進めている模様です。現在のところ政府・日銀から具体的な情報発信はありませんが、日銀がシステム、法制度を含め広範な視点で調査・研究しているのは事実です。現時点で極めて可能性は低いですが、最近の潮目の変化を踏まえると、2020年の仰天予想として日銀がデジタル通貨「デジ円」を発行する可能性があります。
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