海上保安庁、人材確保が深刻な課題 職員の処遇改善と人的基盤の強化を強調
海上保安庁は尖閣諸島周辺の領海警備など役割が増す中、人材確保が深刻な課題になっています。12日に公表されたレポートでは、職員の処遇改善と人的基盤の強化を進めると強調しています。 海上保安庁は、過去1年間の活動をまとめた「海上保安レポート」を毎年公表しています。12日に公表された2024年版では、元日の能登半島地震への対応や、翌日に羽田空港で発生した航空機衝突事故を受けての安全対策の徹底などを伝えています。 中でも強調しているのが、人材確保の難しさについてです。「日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す」一方で、「人材確保難や離職者の増加」が課題になっているとしています。
海上保安庁によりますと、幹部職員を養成する海上保安大学校の倍率は、2021年度は3.6倍でしたが、今年度は2.7倍にまで下がったということです。 また、若い世代を中心に離職者が増え、2019年度の自己都合退職は252人でしたが、昨年度は386人に増加したということです。
これまでのレポートの特集の多くが、尖閣諸島周辺海域の情勢を取り上げたものでしたが、海上保安能力強化のため、海上保安庁を目指す人を増やしたいという思いから、今年は多岐にわたる業務にあたる海上保安官にスポットをあて、現場の声を集めました。 表紙も若者が手に取りやすいようにと、初めてイラストにしたということです。 「巡視船などの装備の強化だけではなく、職員の勤務環境や処遇をより一層改善し、人的基盤の強化を進めなければならない」として、働き方の改善の検討を進めています。 具体的には、海上でもスマートフォンがつながるように、船内のWi-Fi環境の整備や、船内の個室化も検討しているということです。 海上保安庁の石井長官は「当庁に対する理解が少しでも深まり、海上保安官を志す方が増えれば幸い」とコメントしています。