青山学院大・原晋監督が教える人生の未来年表 妄想力を発揮して
「昭和のスポーツ指導」から脱却する
――原監督と青山学院大学は地域スポーツ指導者の育成も進めているそうですね。 これまで中学などの部活動は学校の教員が担っていましたが、これを地域に移行し、民間に委託していく文部科学省の事業が2023年から始まっています。そうなると学校の先生以外の人が中学生にスポーツを指導することも増えることになりますから、最新の科学的な指導のノウハウが必要になります。 ――スポーツ経験や技術があっても、指導者として未経験な方に子どもを預けるのは不安な親御さんもいるかもしれません。 その通りです。野球やサッカーといった特定のスポーツ技術が優れていたとしても、自分たちが受けてきた「昭和の指導方法」でやられては困ります。青山学院大学はキャンパスがある東京都渋谷区と神奈川県相模原市などと連携して、「これからの社会を担う新たなスポーツ指導者育成システム開発」プロジェクト(CASプロジェクト)を始めています。私が会長を務める一般社団法人アスリートキャリアセンターとともに、新しい指導者育成カリキュラムを開発し、地域とのつながりのなかで指導者を育成していきます。 ――スポーツ経験者のセカンドキャリアにもなりますね。 若い頃にスポーツに親しんでいた人たちが、地域で経験を生かしながらスポーツを続ける楽しさを味わえ、「地域全体で子どもを育てていく」という視点も得られます。新しい時代の学校スポーツの可能性に期待してほしいですね。 ――最後に、親に対してのメッセージをいただけますか。 過保護になりすぎるなということです。子どもは一人の人格を持っているのだから、本人が楽しく暮らせるように支えてあげたらいいだけです。親のエゴを子どもに押しつけない。ひとつだけアドバイスするとしたら、道徳観だけは持たせるように。人を裏切るようなことをするな。このことだけを伝えたら、あとは大丈夫ですよ。
プロフィール
原 晋(はら・すすむ)/青山学院大学地球社会共生学部教授。早稲田大学大学院スポーツ科学研究科修士課程修了。修士(スポーツ科学)(早稲田大学)。陸上競技部長距離ブロック監督。一般社団法人アスリートキャリアセンター会長。広島県三原市出身。世羅高校から中京大学に進学し、全日本インカレ5000メートルで3位入賞。卒業後、中国電力に入社し陸上部に所属するが、5年目で選手生活を終えて会社員生活を送る。2004年に青山学院大学陸上競技部の監督になり、09年に33年ぶりの箱根駅伝出場。15年に初優勝に導き、「青学旋風」を巻き起こす。
朝日新聞Thinkキャンパス