Microsoft、AIによるタスク自動化、アップデート時の再起動削減などを発表
Microsoftのテクニカルカンファレンス「Microsoft Ignite」が2024年11月19日(米国時間)に開幕した。米シカゴ会場とリモートのハイブリッドで開催している。 【画像】「Copilot is the UI for AI」 基調講演ではMicrosoftのCEOのSatya Nadella氏が登場し、AIを中心に各分野で新発表をアナウンスした。本記事では、それらの発表についてレポートする。 ■ AIによるタスク自動化「Copilot Actions」 まずはMicrosoft 365 Copilot関連。基調講演では「Copilot is the UI for AI(CopilotはAIのUI)」というメッセージが何度も掲げられていた。CopilotがエンドユーザーがAIの機能を使うためのインターフェイスとなるという意味と思われる。 そしてその具体例として、「Microsoft 365 Copilot Actions」が発表された(プライベートプレビュー)。チームメンバーにメールしたり、レポートをまとめたりといった作業の自動化を、自然言語で指定できるもののようだ。指定はスクラッチで作るほか、用意されたテンプレートから作ることもできる。 ■ 「Microsoft 365 Copilot」の専用エージェントが続々投入 また「Microsoft 365 Copilot」の専用エージェントがいくつか発表された。 「Interpreter」エージェント(通訳エージェント)は、Teamsのビデオ会議で最大9カ国語のリアルタイム通訳を実現する。通訳音声に話者の声をあてることも可能だ。2025年初頭にプレビューの予定となっている。 「SharePoint」エージェントは、「SharePoint」内の文書からチャット形式で回答を返す。アクセス権限は「SharePoint」のユーザー権限などにしたがう。こちらは一般提供が開始されている。 「Employee Self-Service」エージェントは、従業員がチャットから給与情報を取得したり、休暇を申請したりできる。現在、プライベートプレビュー中。 「Facilitator」エージェントは、Teamsのミーティング中にリアルタイムでメモをとり、重要な情報を要約する。現在はプレビュー中だ。 サードパーティのエージェントも発表された。AdobeやSAP、ServiceNow、Workday、LinkedInといった企業のほか、AI開発企業のCohereも入っている。 「Copilot in Teams」も強化される。映像や音声、投影資料、チャットの内容をマルチモーダルで把握し、質問に回答する。 ■ 管理部門向け機能も Copilotの企業利用についてはCopilot利用のROI(投資収益率)などを計測する「Copilot Analytics」も発表された。Copilotの利用とビジネスのメトリクスを合わせて、Copilotがどのぐらいビジネスにつながったかを分析するといったことが可能。これは企業の技術部門がCopilotを管理するためのソリューション「Copilot Control System」の一部として提供される。 ■ Windows 365用シンクライアントマシン「Windows 365 Link」 クライアントデバイス関連では、Azure上のクラウドPCサービス「Windows 365」のクライアントマシン「Windows 365 Link」が発表された。Windows 365に直接つながり、デバイスにデータを残さないという、一種のシンクライアントだ。 サイズは120mm×120mm×30mm。現在プレビューで、2025年前半に一般提供開始予定。デモビデオでは、Copilotやビデオ会議も使えるところを見せていた。 ■ Windowsをアップデートする際の再起動を削減する「Windows Hotpatch」 Windows 11関連では、Windows Resiliency Initiativeの取り組みが発表された。Windowsのセキュリティと回復力に対する取り組みのことで、“7月のインシデント”(CrowdStrikeの不具合による世界的なシステム停止のことと思われる)を教訓とした信頼性強化や、アプリケーションやユーザーが管理者権限なしで実行できるものの拡大、アプリやドライバーへの実行許可のより強力な制御、フィッシングを防ぐためのID保護の強化を謳っている。 Windows Resiliency Initiativeの一つとして、「Windows Hotpatch」がWindows 11とWindows 365にも2025年春で導入されることが発表された。Windows Update後の再起動を減らすもので、再起動を65%削減し、修正適用を60%高速化するという。 ■ エッジ向けAzure「Azure Local」 Azure関連では「Azure Local」が発表された。Azureの機能をオンプレミスで使う「Azure Arc」のエッジ版であり、小売や工場、医療などの現場に配置することを想定しているという。 ■ Microsoft初の内製セキュリティチップ/DPU Microsoft初の内製によるセキュリティチップ「Azure Integrated HSM」を発表した。鍵管理、暗号化管理、キーサインなどを行うハードウェアだ。 さらに、これも初めての内製によるDPU(データプロセッシングユニット)「Azure Boost DPU」も発表された。データセントリックなワークロードの処理を高速化するもので、クラウドストレージのワークロードで3倍の省電力と4倍のパフォーマンスを実現するという。 ■ NVIDIAのBlackwellプラットフォームやAMDのHPC仮想マシンなど NVIDIAの最新のBlackwellアーキテクチャGPUによるAzure上のAIプラットフォーム「Azure ND GB200 V6 VM」シリーズが発表された。Blackwell GPUとARM CPUを1つにしたNVIDIA GB200 Grace Blackwellチップを採用している。プライベートプレビュー。 AMDのEPYC 9V64Hプロセッサーを搭載したHPC(スーパーコンピューティング)向け仮想マシン「Azure HBv5」が発表された。「ほかのいかなる仮想マシンより最大8倍高速」とのこと。2025年に一般提供開始予定。 データプラットフォームMicrosoft Fabricのデータベース「Fabric Database」がアナウンスされた。SQL Serverのエンジンを使ったSQLデータベースにも対応する(パブリックプレビュー)。トランザクションワークロードと分析ワークロードを統合した新しいクラスのデータベースで、ベクトル検索やRAGなどのAI関連の機能もサポートするという。 ■ AIアプリケーション開発の「Azure AI Foundry」 AIアプリケーション開発では「Azure AI Foundry」が発表された。AIモデル、ツール、安全性、監視のソリューションをトータルで支援するもので、「Azure AI Studio」が基になっている。
窓の杜,高橋 正和