<吉野裕行>「怪獣8号」 怪獣9号の声に“ゾクっと”させられる理由 気持ち悪く、不快に、不安定に
「あまり極端な抑揚をつけないでフラットにしゃべるというか。テンションで言うと、低いところの下のほうだけど低すぎず、でも決して中盤より上にはいかないところ。何というかジメっとした感じですよね。キノコみたいな、菌類みたいな感じ」
さらに「年齢も分からないように」とこだわりを語る。
「どうしても、強かったり、説得力のあるタイプになると、自動的に年齢感は上がっていきますよね。でも、あまりそうしたくない。言っている内容がすごくレベルが高くなったとしても、言い方は子供っぽく。そこのアンバランスさが不快に聞こえる。聞く人がズレているんじゃないか?と感じるような部分をちゃんと表現できるといいのかなと思っています。かっちり決まっていない不安定な部分というか。でも、彼のメンタルが不安定なのではなくて、音になって出ているものが安定していない、くらいがいいのかなと」
◇「考えてタのか」「外にデられない」 カタカナを音に
原作では、怪獣9号のせりふは「考えてタのか」「外にデられない」などカタカナが混じるのが特徴で、アニメの台本でも原作と同じように表記されている。吉野さんは、カタカナ混じりのせりふも表現しようとしているという。
「松本先生の意図は聞いていないので私にも分からないのですが、本当は不協和音みたいなものなのかなと。ただ、そこにこだわりすぎると、聞き取りづらいし、むしろ見ている皆さんの集中をそいでしまうのでは? かといって、無視はしたくないから、邪魔しない程度にカタカナの部分をくみ取りつつやれる違和感を狙いました。『外にデられない』というせりふなら、『デ』だけ音を言い直す。カタカナだけ文章の流れにそぐわない高さの音で、外れた音で発声する。聞く人は、そのほうが嫌でしょ? 人間の生理に合わない。そういう存在であってほしいかなと」
第7話の収録では、怪獣9号と対峙(たいじ)する市川レノ役の加藤渉さん、古橋伊春役の新祐樹さんと掛け合いをすることになった。怪獣9号のキャラクター的に、掛け合いも「自分のペースで自分で展開する」形になったという。