米国経済予想外の堅調の背景に移民の急増
過剰流動性は解消も移民増加が米国経済を支える
米連邦準備制度理事会(FRB)は、年内に利下げを開始する可能性を示唆している。ただし、米国経済は依然として、安定を維持しており、現状ではその利下げも、景気浮揚を狙った措置というよりもインフレ率の低下に応じた予防的措置の域を出ていない。 FRBによる大幅な利上げが思ったほど景気抑制効果を発揮してこなかった理由の一つは、コロナ問題を受けた異例の積極財政政策、金融緩和策の影響、と考えられる。これらの施策がマネーを大幅に増加させたことが、金融引き締め効果を減じてきた面があるだろう。
しかし、M2の名目GDP比は、昨年末頃には過去のトレンド上に戻ってきており、過剰流動性の状況は概ね解消されたと考えられる(図表1)。この点から、この先については、金融引き締めの効果が顕在化しやすい可能性があるだろう。
そして、もう一つ考えられる要因は、移民の増加である。米国への移民の増加は、働き手の増加と消費者の増加という、需要・供給の両面から経済活動を活性化させる。米国の人口に占める外国人(海外生まれ)の比率は、コロナ問題発生後に一時低下したがその後に急速に高まり、最新の2024年2月には18.2%に達している(図表2)。
移民増加で2023年の米国成長率は+0.33%押し上げられたと試算
コロナ問題を受けて、国内での出生率低下と移民の流入鈍化の双方から、人口増加率は大きく下振れた。人口増加率はコロナ問題発生後に前年比で+0.5%を下回った後、足もとでは+1.0%程度へと、2倍以上の水準まで回復している(図表3)。しかし、外国人を除く人口の増加率は一貫して低迷が続き、最新2024年2月には前年同月比-0.2%とマイナスとなっている。米国民の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子どもの平均的な数)は2021年で1.7と、人口を一定に維持する約2.1の水準を下回っている。それでも人口が増加を続けているのは、移民の流入が続いているためだ。 2023年の外国人人口の増加率は前年比+3.3%に達したが、それによって2023年の米国の実質GDP成長率は+0.33%押し上げられた計算となる(コブ=ダグラス型生産関数を想定し、労働分配率は厚生労働省の2016年~2020年の試算値57.3%として計算)。