空白のシーンに「スーパープレイ」が!? 『スラムダンク』試合を決めた「影の立役者」たち
■「湘北VS翔陽」途中交代で入り、しっかり試合を終わらせた木暮と角田
インターハイ神奈川県予選決勝リーグ「湘北VS翔陽」にて。 試合終了まで残り2分30秒の場面で三井寿がスタミナの限界を迎え途中交代、残り1分50秒に桜木が5ファウル退場と、立て続けにスタメン選手が試合から抜けた湘北。このピンチに、残りの時間をしっかりと務めたのが木暮公延と角田悟だった。 3年生の木暮は、湘北のシックスマンとしてほかの控え選手と比べ出場回数も多く、陵南戦でもインターハイ出場を大きく引き寄せる3Pをも決めている選手だ。一方、2年生の角田は桜木が戦力に加わってから控えに回り、それから出場機会もほとんどなくなっている。しかし身長180cmのセンター、湘北では貴重なインサイドプレイヤーである。 原作で残り1分50秒の試合展開は詳しくは描かれていないが、この時点で湘北は60ー62とわずか2点のリードだけ。いつ逆転されてもおかしくない状況だった。 おそらく翔陽のポイントゲッターのセンター・花形透と藤真健司は、引き続きスタメンの3人がしっかりと抑えたのだろう。そして、交代で入った木暮と角田がそれぞれフォワード・長谷川一志とセンターフォワード・高野昭一とマッチアップしたのではないだろうか。 どちらもそこまで得点力の高い選手ではないが190cmを超える大柄な選手で、木暮178cm、角田180cmにとって脅威だったことは間違いない。 作中では「県No.2翔陽のプライドをかけた猛攻に最後まで耐えぬいた」とナレーションが入っていたが、最終的に62ー60でスコアは動かず、湘北が勝利している。
■「湘北VS陵南」誰よりも早く切り替えをし、檄を飛ばした桜木
残り1つの県代表の座をかけて戦ったインターハイ神奈川県予選決勝リーグ「湘北VS陵南」。試合終了間際、檄を飛ばした桜木は素晴らしかった。 試合終了まで残り10秒を切る場面、ラストで桜木がリバウンドを押し込み、湘北のリードは4点に。その直後、油断することなく「戻れっ!!」「センドーが狙ってくるぞ!!」と陵南陣地に駆け戻る桜木。「おう!!」と、ほかの湘北メンバーもそれに応え、素早くディフェンスを構える様子が描かれている。 実は過去、陵南との練習試合で、湘北は同じような展開で陵南に逆転され敗北している。試合終了間際、桜木は覚えたてのレイアップシュートを決め逆転に貢献したものの「ハッハッハッ!!! やはり天才!!!」と浮かれて油断。その隙を突いた仙道に、あっさりと再逆転のシュートを許してしまっていた。 きっとこの苦い記憶が蘇ったのだろう。桜木の「戻れっ!!」というこの言葉から、バスケットマンとしての成長が感じられる。 さらに注目してほしいのは、この桜木の一声に、仙道がハッとした表情を見せていることだ。仙道は切り替えが早い、作中屈指のクレバーな選手だ。しかしこの描写から、桜木はそんな仙道よりも次の展開へ切り替えをしていることがわかる。 その後、試合終了までの詳細は描かれていないものの、桜木の一声もあり湘北メンバーは最後まで集中を切らすことはなかっただろう。そして、湘北は陵南を下し、念願のインターハイ出場を果たしたのである。 今回は、『SLAM DUNK』あの空白のシーンはどうだったのか「影の立役者」たちを考察してみた。 いずれも地味なプレイだったかもしれないが、試合終了間際の場面、勝敗に直結するような重要な必要なプレイであったように思う。このような考察をして楽しめるのも『SLAM DUNK』という作品が、色褪せない理由かもしれない。
海狸こう平