【解説】幕を開ける国会論戦 過去には政権存続を左右 野党の追及に岸田首相は何を国民に語るか
政治資金規正法違反で与党、自民党が大荒れのなか、ことし最初のビッグ政治イベント、通常国会が1月26日に召集される。 岸田文雄内閣は、熾烈な野党の追及をかわし、論戦を乗り切りことができるか。当面の焦点は与野党が総力をあげて展開する衆参の予算委員会だ。ここで審議がストップすれば、首相がクビを差し出し、それと引き換えに予算案を通すという最悪の事態もあり得よう。 過去、さまざまなドラマを生んだ国会論戦。今回は内閣の命運がかかるだけに、例年にもまして緊迫した展開になりそうだ。
外れた「派閥解消」による批判打ち消し
政治資金規正法違反をめぐり、安倍、二階派だけでなく岸田派も立件されたことにもっとも驚いたのは、岸田首相その人かも知れない。首相は、裏金疑惑があり不記載の額が巨額にのぼる両派とは異なり、自派のケースは単なる手続きミスと甘く考えていた節があるという(読売新聞)。 東京地検にしてみれば、情状はそれとしても、岸田派だけを「おとがめなし」にはできなかったろう。 首相は、来年度予算を早期に成立させて能登半島地震の復興を急ぎ、通常国会を乗り切って反転攻勢つなげたいと目論んでいたようだ。それだけに、岸田派立件は大きな打撃だった。 みずから率先して派閥解散を宣言したのも、思惑がはずれたことによる動揺の表れ、機先を制して批判をかわすという目論見だろう。 派閥解消については、各メディアで報じられているので繰り返すのは避けるが、自民党では過去にも同様の決断をしたものの、その後、なし崩しに派閥復活を繰り返してきた経緯がある。それだけに、今回の3派の解散が、自民党派閥の将来にわたる解消につながると考える人は皆無に等しいだろう。 事実、1月23日にとりまとめられた自民党の刷新案は、「政策集団」としての派閥の存続を認めている。できないことをできるといわないだけ、むしろ〝正直〟というべきかもしれない。
激しい野党の追及で過去には総辞職も
通常国会の論戦では、こうした問題で野党が舌鋒鋭く政府を追及してくると予想される。 1月24日、前哨戦ともいうべき予算委員会審議が衆参両院で行われ、今回の政治資金規正法違反事件に絡んで末松信介参院予算委員長(安倍派)が急遽辞任した問題が事前通告なしでとりあげられ、国会論戦の前途が楽観できないことをうかがわせた。 この日のテーマが能登半島地震復興であったことから、本格的な追及には至らなかったが、本番ではこうはいかない。ここで想起するのは、1989年のリクルート事件をめぐる竹下登内閣の総辞職だ。 リクルート社から未公開株を受けとった閣僚らが前年から辞任。関係者らの逮捕が相次ぐ中で召集された通常国会は荒れに荒れた。 証人喚問問題などをめぐって、審議はたびたびストップ、予算成立の見通しが立たなくなったため、竹下登首相が4月末、退陣を表明。「政府の最高責任者として、国民の信頼を取り戻すために自ら身を引く決意を固めた」と総辞職の理由を説明した。 岸田首相に対してもいま、国民から厳しい視線が注がれている。各メディアの世論調査では、内閣支持率が発足後最低を記録、派閥解消をめぐっても、存続の方針を維持している麻生派、茂木派からの反発も少なくない。 党内基盤が弱体化しているなかでは、首相を盛り立てる動きは期待できそうもない。ただ、支持率が最低といっても、1月の支持率は微減か先月と同水準にとどまっている。こうした状況の中で、低落傾向が底を打った気配を見せるのはむしろ驚きというべきだろう。このあたりが事態打開にながる数少ないカギになるかもしれない。