ドジャース・大谷 世界一の代償…左肩手術 WSで「脱臼」の重傷だった 投手のリハビリに影響も
ドジャースは5日(日本時間6日)、大谷翔平投手(30)がロサンゼルス市内で左肩の手術を受けたと発表した。損傷した関節唇の修復を内視鏡手術で行った。ワールドシリーズ第2戦で二盗を試みた際に負傷。その後も出場を続けて自身初の世界一をつかんだが、代償は決して小さくはなかった。球団は来年2月のキャンプには間に合う見通しを示したが、投手としてのリハビリ過程に何らかの影響を及ぼすのは避けられず、今後の調整の行方が注目される。 悲願のワールドチャンピオンをつかんだ。ただ、代償はゼロではなかった。10月26日、ヤンキースとのワールドシリーズ第2戦。大谷の負傷後に左肩は軽度な「亜脱臼」と公表されたが、この日の球団リリースでは「脱臼」と表記され、二盗に失敗したスライディングで脱臼した際に関節唇を損傷していた。 その後も肩の動きを減らすため左手で胸元をつかみながら、最後までフル出場を続けた。第4戦では安打し、第5戦ではバットに捕手のミットが触れる打撃妨害での出塁で決勝点につなげた。「ケガした直後はもうシリーズ無理かなと思った」とも振り返った。それでも「チームの士気だけは下げたくなかった」と第2戦後の移動前には同僚らへ「大丈夫だ。プレーするつもり」とテキストメッセージを送った。痛みを押して、最後まで言葉とプレーで鼓舞した。 球団は2月のキャンプは間に合う見通しを示したが、昨年9月の2度目の右肘手術からの投手としてのリハビリ過程への影響は避けられない。来季は3月18、19日に、東京ドームでカブス相手の凱旋開幕シリーズから幕を開ける。大谷には開幕投手として投打二刀流復活が期待され、そこへ向けてプランが進められていた。スイングへの影響について「逆サイドの方がきつい。左肩で良かった。不幸中の幸い」と語っていたが、投球でも利き手ではないとはいえ、引きつける動作などが加わる。当初は打者相手の実戦形式の投球をシリーズ後にも行う予定だったが、投球プログラムも数週間は行えないことが見込まれ、投手復帰時期がずれ込む可能性が出てきた。 東京での開幕投手での二刀流復活は、簡単には見通せなくなった。アンドルー・フリードマン編成本部長は、この日から開幕したGM会議の会場で「He’s good(彼は大丈夫だ)」とだけ話し、球団幹部は「今日は(対応が)難しい」と、6日(日本時間7日)に詳細を説明する意向を示した。より詳細な状況と、今後へ向けた言葉が待たれる。(杉浦大助通信員) ≪投手&DH 確実に復帰のための選択≫▼ベースボール&スポーツクリニック馬見塚尚孝理事長 当初デーブ・ロバーツ監督は亜脱臼と説明していたが、この日の球団の発表は脱臼だった。肩脱臼による肩関節唇の損傷はほぼ100%、スライディングで左手を地面についた時によるもので、その後のプレーで深刻化したとは考えにくい。手術せずに安静を選択する場合もあるが、若い年代は再発性が高い。 来年3月18日の日本での開幕戦まで約4カ月。十分復帰に間に合うが、来季、確実に投手とDHで復帰するために手術を選んだのだろう。キャンプインの2月上旬に間に合う可能性があるが、無理しなければならないレベルの選手ではない。また、一塁側への投手強襲の打球を捕球しにいった際に、左肩が再び脱臼しやすい位置になる恐れがあったが、手術後はその心配も減る。グラブを体側に引くなどの投球動作にも支障はない。それにしても、脱臼した状態で負傷前と同じような打球速度、スイングスピードでプレーできた事実には驚きしかない。 ▽肩関節唇 肩甲骨と上腕骨のつなぎ目の肩関節にある軟骨状の組織。関節窩(か=関節のくぼみ)の縁を取り巻くように付着している。肩関節が上下、左右などにぶれないように安定性を高めるのと同時に、衝撃から守るクッションの役割を果たしている。外傷などで関節唇がはがれる、損傷した場合は手術が必要になる。 ▽大谷の過去の手術歴 ◇右足首 日本ハム最終年の17年10月に「右足関節有痛性三角骨(足関節後方インピンジメント)」を除去手術。前年の日本シリーズの走塁で痛め、17年3月のWBC辞退の原因となった。 ◇右肘(1度目) エンゼルス1年目の18年6月に右肘じん帯損傷。一時復帰も新たな損傷が見つかり、10月に右肘じん帯再建手術(通称トミー・ジョン手術)。復帰登板は20年7月26日のアスレチックス戦。 ◇左膝 19年9月、左膝の分裂膝蓋(しつがい)骨の手術を受ける。同年2月に痛めていた。全治8~12週間で残りシーズンを欠場。 ◇右肘(2度目) 23年8月に右肘のじん帯損傷が判明。その後も野手として出場を続け、9月にトミー・ジョン手術を受ける。ドジャースに移籍した24年は打者に専念した。