国境も、性別さえ超える宮沢りえ「オーランド」…「どんな演出が来てもあふれない部屋を心の中に」
宮沢りえが、20世紀英国のモダニズム文学の作家ヴァージニア・ウルフの小説を原作にした舞台「オーランド」に主演する。16世紀から20世紀までを生き、性も男性から女性へ変わるボーダーレスな存在、オーランドの奇想天外な物語。演出家の栗山民也とは今回、初顔合わせとなる。(山内則史)
16世紀イングランドに生まれたオーランドは、詩を書く貴族の青年。エリザベス女王をも魅了する美貌(びぼう)で、ルーマニアの皇女に激しくアプローチを受け、逃げるように外交官としてトルコへ。昏睡(こんすい)状態に陥り7日目に気づくと、自分の身体が女性に変わっている。性も国境も時代も超え、オーランドは時の変化を見つめ、成長してゆく。
詩人で翻訳家の岩切正一郎が翻案し「すごくポエティックで、360年の時間の中で変化するオーランドが濃密に描かれた、すべてにボリュームがある」台本ができた。体現できるかプレッシャーを感じたが、「栗山さんとご一緒する心強さがあった。どんな演出が来てもあふれない部屋を、心の中に準備した」という。
稽古はすべてが刺激的だった。「栗山さんはひとつひとつ、オーランドの動きを全部決めてくださる。それを枠として覚えて自分で色を付けていく。本当に細かく緻密(ちみつ)な線を受け取って、その動きにつながる自分の動機とか感情を作っていく」のは、これまで経験したことのない時間だった。その中で、「いま、その時代に生きているオーランドの、火だねのようなものを演出の言葉としてくださる。詩的な言葉に温度がつき、言葉が生々しいものになっていくのを実感した」。
「間」の大切さも教えられた。「私はセリフがとにかく速い。栗山さんは『間の中に言葉があふれるのが、最高の演劇だと思う』と言ってくださった。これは一生、大事にしたい言葉だなと思いました」
2018年に読売演劇大賞で3度目の最優秀女優賞と初の大賞を受けた時、04年の「透明人間の蒸気(ゆげ)」(野田秀樹作・演出)を転機に挙げ、「演劇という社会にオギャーと生まれた」と振り返った。「誕生」から20年。「31歳でしたが、もっと舞台の上で深く呼吸し、生きている役として舞台で立っていられることを目指したいと思った。いろんな役を通して豊かになれた部分もあるし、年齢を重ねて出来る表現、にじみ出るものもある。この20年、お客さんに見てもらえているんだな、すごくありがたいことだなと思う」
ウエンツ瑛士、河内大和、谷田歩、山崎一が共演。ステージングは小野寺修二。公演は29、30日が与野本町の彩の国さいたま芸術劇場、7月5~28日は東京・渋谷のパルコ劇場。(電)0570・00・3337。