「嫌なことを思い返さない」「話す相手がいなくても誰かに語りかける」92歳のシスター・鈴木秀子の元気を支える<食事の取り方>
◆高齢者施設は、修道会の暮らしに似ているように感じます ですから、食事のときはたくさん会話をします。食事は、生きていく楽しみを共に味わう場ですから。 おなじ釜の飯を食うという言葉があるように、楽しくいっしょに食事をすると、なぜか心を許し合えて、まるで人生の苦楽を共にしたような気がするものです。 修道会で私といっしょに生活をしている人たちは、多くが海外で生活した経験を持っています。海外では食事中のコミュニケーションをとても大切にします。 高齢者施設は、それぞれが個室で時間を過ごし、食事や活動はほかの入居者と共にするという生活スタイルですから、目的は違えど修道会の暮らし方に似ているように感じます。 私は、講演の予定が延期になったりして時間ができると、「なにをしようかしら」と考えます。 そんなときは、修道会の食事メニューに彩りを添えられたらという気持ちで、インターネットで料理のレシピを検索します。 先日は「なすと鯖缶の煮物」をつくりました。食卓でみなさんと「こんなメニューを見つけたのよ」なんて会話をしながら食事をしていると、栄養以上のエネルギーをもらっています。
◆年を取るほど、自分を押し殺さないでくださいね 私は食事をするとき、決めていることがあります。 それは、今日あった嫌なことを思い返さない、ということです。 そのためには、目の前に出された食事のことを考えます。 「このにんじんは、どんな農家さんが育てたのかしら。ありがとう」と感謝したり、「お米が実った黄金色に輝く秋の田んぼを見てみたいな」と自然に思いを馳せたり、「今日はつくったことがないレシピに挑戦できたわ」と自分を褒めたり。 目の前の食事を楽しむことが元気の秘訣だと感じています。 目の前に話す相手がいないときは、亡くなった両親や友人、遠くで暮らす家族など、話す相手を心に決めて語りかけます。 生きているときはどんなに厳しくて口うるさい親だったとしても、もうあなたを否定することはありません。亡くなった方は、絶対的に肯定的だからです。 「お母さん、このにんじんは甘くて美味しいね」 「このレシピに新しく挑戦してみたの。どう?」 こんなふうに話しかけてみるといいですよ。 ひとりで食事をする人であれば、だれに遠慮することもありません。いつ食べてもいいですし、どんなふうに食べてもいいのですよ。 最後にもう一度。年を取るほど自分を押し殺さないでくださいね。 ※本稿は、『あなたは、そのままでいればいい』(扶桑社)の一部を再編集したものです。
鈴木秀子
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