文学座の横田栄司、「オセロー」で復帰…いったんは断ったが「ポンコツなりの役立ち方があるんじゃないか」
鵜山演出のみならず、蜷川幸雄演出のシェークスピア舞台の常連だった。シェークスピアはお手の物と思いきや「毎回新しい宇宙だと思って立ち向かわないとはね返される」と語る。特にせりふの膨大さ、独特の言い回しには苦労したという。「でも、ずっとやっているとせりふを考えなくても口が勝手に動き出す時がやってくる。これを勝手に『シェークスピアハイ』と呼んでいます。いつ来るか分からないけど、そこを目指して練習を重ねていきたい」
劇団の養成所に入ったのは1994年。30年にわたって様々な先輩から薫陶を受けてきた。特に忘れられないのは、2007年に亡くなった名優・北村和夫とのやりとりだ。
01年前後に北村のせりふ覚えの相手役としてついて回っていた時、北村から詩集を5、6冊手渡されたことがあった。「『俳優はいつも心に詩を抱えて生きていなさい』と、その場で詩を読み上げさせられた。なんか、格好いいなって。役者をやる上で自分の中で核となって残っています」
長年、舞台を中心に活動してきたが、22年に三谷幸喜脚本のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で演じた和田義盛が好評を博し、知名度は全国区に。「オセロー」での舞台復帰が発表され、今年5月にチケットが売り出されると即日完売した。文学座によると、これほどの反響の大きさは04年に当時座員だった内野聖陽が主演した「モンテ・クリスト伯」以来という。
「本当にありがたいです。まだ、稽古半ばで思い通りの自分にはなれていませんけど、今改めて、役者って楽しいなと思います」
訳は小田島雄志。東京・新宿の紀伊国屋サザンシアターで29日から7月7日まで。追加公演のチケットが販売中。(電)0120・481034。