400種超を見つけた“新種ハンター” 「今でもドキドキ」少年のような探究心 #令和に働く
その数400種超。エビなどの十脚目甲殻類の分類をテーマに研究する千葉県立中央博物館の前動物学研究科長、駒井智幸さん(58)が甲殻類の新種を発見した数だ。公務員として日々の仕事をこなしながら研究を続ける駒井さんは、研究者ランキング調査「世界トップ2%科学者ランキング」にも選出された一流の科学者で、「新種ハンター」の異名も持つ。一つの新種を発見するだけでも気が遠くなるような地道な作業が必要だが、一体何が駒井さんをそこまで駆り立てるのか。子ども時代から学生を経て、「ハンター」となるまでの道をたどった。(デジタル編集部・町香菜美)
「メカニック」な形に魅せられ
「家は海まで目と鼻の先」。太平洋を望むリアス海岸で知られる岩手県の沿岸部で、海の恵みも豊富な宮古市出身。地元では漁師が引き上げた網に、魚だけでなく貝やエビ、カニなどが混じっていた。小学生の時、特に目を輝かせたのは赤や紫色のデザインが美しくプラモデルのような「メカニックな」形状をした甲殻類だった。
毎朝、近くの漁港に行き、売り物にならない生き物を家に持ち帰っては水槽やタライに入れ、気が済むまで眺めた。一方で図鑑に載っていない生き物も多く、子どもながらもやもやとした気分を覚えた。そして、こう思った。「自分で調べるしかない。全てのエビやカニを発見、分類したい」
生き物に初めて名前が付いた
進学先の北海道大学水産学部では、甲殻類の調査をする人がいない中、独学で研究を進めた。大学院でも研究を続ける中で、国内の代表的な研究者である国立科学博物館の武田正倫氏らに会う機会があり、卒論で扱った未記載種と同じ標本を持っていることが判明した。一緒に論文を手掛け、1989年、「第一号」となる新種のエビ「トゲキジンエビ」の発表に至った。
「これで研究者の仲間入りができるかも」。標本は地元の宮古魚市場で過去に採取したもの。自身が見つけた生き物に名前が付いた瞬間だった。
今も手書きの記録
地球上に約1万7千種、国内には約2千種いるとされるエビやカニなどの十脚目甲殻類。同類の動物分類学を専門とし、新種の可能性がある生き物を採取しては、形態の比較やDNA解析で既知種でないか確かめる。そこから論文を執筆して「新種発見」となる。