「スーパーに米がない」SNSで“米騒動”心配する声も… 農水省「93年とは状況違う」冷静な対応を呼びかけるワケ
“万が一”への備えは?
ただ、こうした数字を並べても、1993年の大凶作や米騒動を経験している人には、不安が残るかもしれない。 そこで政府の備えについて、前出の担当者は次のように説明した。 「政府では100万トンの米を備蓄米として準備しています。100万トンというのは日本国民が2か月間に消費する量に相当しますが、これは万が一の時に、約2か月分しかお米を食べられない、ということではありません。 極論、お米の生産量が0になると、確かにその秋以降に日本人が食べられるお米は2か月分になってしまうでしょう。 ですが、お米の出来具合を表す作況指数という指標をみていくと、この数値は74まで落ちた1993年を除くと、ここ数十年の間でおおむね97から103くらいで収まっています。 お米の品種改良などが進んだこともあり、作況指数が大きく落ちることもまずないと考えていますし、仮に90まで落ちたとしても、生産したお米に備蓄米をプラスすることで、1年間は国産のお米を国民の皆さまに食べていただけるようになっています」(農水省・担当者) なお、現在の状況は備蓄米を放出する基準には至っていないという。 「著しい民間在庫の減少や価格の高騰が起きた時には、お米の備蓄方針を決めている、国の食料・農業・農村政策審議会が総合的に判断し、備蓄米の放出を決定することになっています。 ですが、現状は先ほど申し上げたとおり、在庫も価格も数年前と同じくらいの水準となっていますから、放出するという判断には至っていません。 もし、今年の秋にとれるお米が、いつもより10%、20%と減少してしまったということになれば、必要に応じて放出することになると思います」(同前)
食料安全保障強化へ、今後も備蓄のあり方検討
先月、政府は食料・農業・農村基本法を改正。「食料安全保障の確保」を新たな基本理念として追加した。 また、これに連動する形で、食料供給が減少し、国民生活・国民経済に影響が生じる事態を防止するための食料供給困難事態対策法が6月に成立している。 「食料供給困難事態対策法では、政府が基本方針を定めることになっています。 今後、基本方針を定めていくなかで、お米や麦、大豆といった特定食料の備蓄のあり方について議論していきます」(農水省・担当者)
「備えもあるので安心してほしい」
コロナ禍では、学校給食が止まった影響などから、消費者が米や麺類を買いだめし、欠品が出るなど一部で騒動が起きていた。 「いつもは1袋しか買わないけれど、いろんな報道があって心配だから2袋買おう、という消費者が増えてしまうと、それがちり積もって混乱が生じるおそれがあります。 現在の価格や在庫は著しく厳しい状況にはなっていませんし、備蓄米制度といった備えもありますので、慌てずに、安心していただければと思います」(農水省・担当者)
弁護士JP編集部