星街すいせい、三枝明那、兎田ぺこら、花譜……バーチャルアーティストの単独ライブもアリーナ規模の時代へ
以前はインターネットでのみ楽曲を発表、バーチャル空間でライブを行うなどの活動で人気を拡大してきたVTuber/バーチャルアーティストは、楽曲やボーカルのクオリティの高さなども手伝って、いちアーティストとしての存在感を確固たるものとし、近年はリアルでも音楽活動を行うようになった。メジャーデビュー、CDリリース、アニメなどの作品とのタイアップ、そしてリアル会場でのライブと、今や通常のアーティストとなんら変わりない活動を行っている。 【画像】新宿アルタビジョンで街頭告知をした星街すいせい アリーナクラスの会場でワンマンライブを行うなど、突出した人気を誇るVTuber/バーチャルアーティストも台頭し、個性豊かな歌声と圧倒的なパフォーマンスは海を越えて海外からもファンが押し寄せる。なかでも特筆すべきなのが、兎田ぺこら、花譜、三枝明那、星街すいせいだ。インターネットを飛び出しリアルで音楽シーンを席巻する彼らにスポットを当て、アーティストとしての魅力とライブの魅力を紐解いていく。 ■兎田ぺこら:有明アリーナ まず、初のソロライブがいきなり有明アリーナという破格のソロライブデビューを果たした兎田ぺこら。うさぎ(バニーガール)の耳をはやした見た目に違わぬ、明るくポップでファンタジー感あふれる楽曲を次々と発表。最も視聴された女性ストリーマーランキングで世界3位に入った2021年は、自身の誕生日に初のオリジナル曲「ぺこらんだむぶれいん!」を発表。同作には、作詞:畑亜貴、作曲:俊龍、編曲:よるが参加したことで話題に。卯年の昨年は、作詞・作曲に前山田健一を迎えた「全人類 兎化計画!」を発表し、前山田らしいゲームミュージックのようなサウンドと、早口でまくし立てるような爽快感のある歌でリスナーを虜にし、ミュージックビデオはYouTubeで223万回再生(9月14日現在)を記録した。また1stソロライブの直前には、いっしょに叫んで楽しいコールが満載されたアイドルソング「昇天直前Love it LIVE」、1stアルバム『うさぎ the MEGAMI!!』を発表した。 2023年12月6日に有明アリーナで開催された1stソロライブ『うさぎ the MEGAMI!!』には、「#全人類兎化計画」というスローガンの元、うさ耳をはやしたグッズを身に付けたリスナーが集結し、本人が務めた開演前の影ナレからぺこら節で会場を盛り上げた。ビジョンには楽曲の雰囲気そのまま、カラフルでポップな映像や「ぺこちゃーん」などコールの文字などが映し出され、会場の声援も息ぴったり。ゲストにホロライブ3期生の同期メンバー、不知火フレア、白銀ノエル、宝鐘マリンが応援に駆けつけてコラボステージを行ったほか、B小町の「サインはB」をはじめ、supercell、YOASOBIなどのカバーも披露された。ダンスに歌に、全力でステージを全うした兎田。最後は1stアルバムのオープニングを飾った「兎座ストーリー」を歌唱し、金テープが発射されるなど、大団円でライブの幕を閉じた。兎田ぺこらの「#全人類兎化計画」、今後はどんな会場でどんなライブを行うのか、展開に期待が高まっている。 ■花譜:国立代々木競技場 第一体育館 14歳から活動を始め、18歳のときに『Forbes Japan』の「2022年版 世界を変える30歳未満」の1人に選出、同年バーチャルアーティストとして初めて日本武道館のステージに立ったことで知られる花譜。放送中のTVアニメ『時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん』第6話EDテーマとして、花譜 × ズーカラデル「秘密の言葉」をアーリャ(CV:上坂すみれ)とコラボしたことも話題。 「不可解」というタイトルを掲げて行われた花譜のワンマンライブシリーズは、2019年に恵比寿LIQUIDROOMで第1回目となる『花譜 1st ONE-MAN LIVE「不可解」』を開催。クラウドファンディングによって4000万円を超える支援金が集まり実現した同ライブは、YouTube Liveでも生配信され最大同時接続数は2万人超、X(旧Twitter)で公式ハッシュタグ「#花譜不可解」が世界トレンドで1位になり、リアルとインターネットで大きな反響を呼んだ。そこに居るのに今にも消え入りそうな、どこか不確かな存在感を放つ彼女だが、ひとたびステージに上がればその存在は確固たるものとなり、生バンドと本人、そして観客が同次元にいることを実感させた。そのときに披露された「不可解」は、生きづらい世の中に対する思いの丈を吐露するような語りと、それに震えながら立ち向かうような儚くも力強い歌声で、多くのファンのハートに火を灯した。 2022年に行われた日本武道館公演『花譜 3rd ONE-MAN LIVE「不可解参(狂)」』では、XR(クロスリアリティ)と呼ばれる最先端技術が使用された。はじまりの曲である「糸」や「魔女」など代表曲を始め、自身初の作詞・作曲による「マイディア」などが披露された同ライブ。巨大なビジョンに楽曲をイメージしたグラフィックと歌詞を映し出しながら、熱く歌声を響かせた彼女。バンドにターンテーブルやストリングスを加えた豪華なサウンド、立体的に組まれたステージセット。配信では、客席からは見えない後ろや上からのアングルも映し出され、もはや全てが三次元のライブと見まごうばかり。大森靖子や東京ゲゲゲイのMIKEY、ORESAMAなどのアーティストがゲスト出演し、バーチャルとリアルが見事に融合したステージを展開した。彼女がやってきたことの答えに辿り着いた武道館。2本の足でしっかりステージを踏みしめながら、MCで武道館に立った喜びを伝えた姿からは、それまでの不確かな存在感は姿を消していた。 花譜は、新たに「怪歌」というタイトルを掲げ、今年1月に代々木第一体育館で開催した『花譜 4th ONE-MAN LIVE 「怪歌」』に続き、11月3日には、『KAMITSUBAKI WARS 2024 神椿幕張戦線 IN MAKUHARI MESSE EVENT HALL』のDAY-2で、『花譜 4th ONE-MAN LIVE「怪歌(再)」』を開催する。「不可解」シリーズを完結させ、「開花」「開化」など様々な含みを感じさせるタイトルとステージ。「怪歌」に込めたものをその目で確かめてほしい。