『ダークナイト』でキャリア一変 デヴィッド・ダストマルチャン、奇妙な役も恐れない理由
「俳優としてみじめに失敗して、僕を使おうなんて思う人はいなくなるんじゃないかと考えていた時期がありました。家賃も払えるかわからないし、食べ物を買えるかもわからないといった生活をしていたあの時期のことは、よく覚えています。1人目の子供を病院から連れ帰った時、僕ら夫婦が持っているお金はたったの200ドル(3万円・1ドル140円計算)くらい。これからどうすればいいんだ……と思ったものです。そうしたジャックの抱える恐怖心はすでに経験していたので、演じるうえで非常にアクセスしやすかったですね」 そんなデヴィッドにとって、キャリアの大きな助けとなったのが、クリストファー・ノーラン監督の『ダークナイト』(2008)だったという。同作でデヴィッドは、ハービー・デント(アーロン・エッカート)に銃で脅迫を受けるジョーカー(ヒース・レジャー)の信奉者として出演。出番は短いが、鮮烈な印象を残した。
「シカゴで舞台に立ちながら、俳優としてキャリアを積もうとしていたころにめぐってきた機会でした。役は小さいけれど、オーディションを経てキャスティングが決まって、ノーランやヒースといった、本当に素晴らしいアーティストたちと仕事をすることができた。その経験が僕の人生を変えました。役のためであれば、奇妙であったり、ダークであったりといった、(自分の内面の)異質な場所へ行くことをいとわない。そういう、性格俳優としてのキャリアを立ち上げる、きっかけになる映画だったんです」
それからもデヴィッドは、『アントマン』シリーズのカート役や『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』のポルカドットマン役などのエキセントリックなキャラクターでファンから愛され、『オッペンハイマー』や『DUNE/デューン 砂の惑星』『プリズナーズ』などでも強烈な印象を残す性格俳優として活躍している。
「ジャックの抱えているような恐怖心とか不安というものから解き放たれたくて、たくさんのことをしました。感謝すべきことに、そういったことを重ねた現在は、すごく気持ちが落ち着いています。そういうところまで、たどり着くことができました。やっぱり、そういう心持ちの方が、アーティストとして自由な心をもって演技もできるものなんです」(編集部・入倉功一)
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