米国4月雇用統計後に一時1ドル151円台までの円高:日米金融政策が逆方向に動き出す秋まで、円安阻止の為替介入で時間稼ぎができるか
総じて下振れた4月米雇用統計
今後のドル円レートの方向や日本政府による為替介入の可能性を探る観点から注目を集めていた4月分米雇用統計が、米国時間の5月3日に発表された。 4月の非農業雇用者数は前月比+17万5,000人と、事前予想の+24万人増加の半分程度となった。増加幅は、1-3月期の月間平均+26万9,000人から大きく低下している。また、労働参加率は62.7%で前月比横ばいとなった。25-54歳の年齢層では83.5%に小幅上昇し、約20年ぶり高水準に並んでいる。労働参加率の上昇は、労働供給の増加を通じて賃金上昇圧力を抑える方向に働く。 失業率は3.9%と、事前予想の3.8%を上回った。さらに時間当たり賃金は、前月比+0.2%と事前予想の+0.3%を下回った。前年同月比は+3.9%と前月の同+4.1%から低下した。2021年6月以来初めて4%を下回った。 今回の雇用統計は、全体として経済活動が軟化しており、労働需給が緩和に向かい、インフレリスクが低下している可能性を示唆するものとなった。
今後のドル円レートは米国の経済指標に左右される
雇用統計は、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ観測を再び高めた。先行きの金融政策についての金融市場の見通しを強く反映する2年物国債利回りは、3日に一時4.71%と約1か月振りの水準まで低下した。また、フェデラル・ファンド(FF)金利先物市場では、年内の利下げ幅の予測は、雇用統計発表前の0.42%から、0.47%へと拡大した。0.25%幅で、概ね年2回の利下げが予想されている状況だ。また、年内利下げ見送りの確率は9%程度と、前日の14%から後退した。 今まで後退を続けていたFRBの利下げ観測が再び強まる中、為替市場ではドル安圧力が生じた。3日の米国市場で、ドル円レートは一時1ドル151円台まで円高ドル安が進んだ。 4月29日にドル円レートは一時160円に達したが、同日と5月2日に日本政府は2回の為替介入を実施したと推察されるが、この間、円安は相応に修正されたのである。 円安の修正は、為替介入の効果だけではなく、5月1日の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見でパウエル議長が利上げの可能性を明確に否定したことや、今回の弱い雇用統計など、米国側の要因によるところも大きい。 従って、今後のドル円レートは、米国の経済指標に大きく左右されるだろう。強めの米国経済指標が発表されれば、再び1ドル160円に向かう可能性がある。他方、弱めの経済指標が続けば、1ドル140円台まで円高の巻き戻しが生じる可能性もあるだろう。 日本が連休中の5月6日月曜日のドル円レートは、一時1ドル154円まで円安となった。