おしゃべりな人ほどガードが堅い? 相手の“本音を引き出す”技術
コミュニケーションの難しさを感じている人は多い。目上の人や得意先などと、どのように円滑に話が進められるのか日々悩んでいるビジネスパーソンもいることだろう。コミュニケーションのプロであるインタビュアーはどんなスキルを持っているのか、なにを大事にしているのか。年間100本以上の連載を持つ取材のプロ、ラーメンライターの井手隊長が語る。 ※本稿は、井手隊長著『できる人が知っている「ここだけの話」を聞く技術』(秀和システム)より一部抜粋・編集したものです。
会話の主導権を握られないために
世の中には「とにかくしゃべりまくる」という人が結構います。 私が取材する相手でいうと、ラーメン店主にはあまりいないのですが、経営者やビジネス書の著者などに、マシンガントークの方が割と多い傾向にあります。 こういう方はしゃべるのが得意なので、ひとつの質問に対してどんどんしゃべってくれます。 自分語りが得意で、自己分析もしっかりとできており、アピールポイントもしっかりと事前に整理されているので、どんどん答えが出てくるのです。 このパターンは一見、短い時間で十分な撮れ高があり、理想的な取材になると思いがちですが、じつはそれとはまったく逆です。 もっと言うと、事前に自分が最大限アピールできる内容を、しっかり固めてきているので、完全な「宣伝広告」にもなり得てしまいます。 たくさんしゃべってくれることは、もちろんありがたいのですが、取材が相手の自己アピールの場かというと、それはまた違うのです。 これは、下手すると聞き手としての質も問われるので、このパターンが来た場合は注意しましょう。 相手がしゃべりまくる人の場合、完全に主導権を握られてしまいがちです。 しゃべる側が気持ちよくしゃべれる環境を作ることは、一般的には理想なのですが、しゃべりまくる人の場合は、一概にそれがベストとは言えないでしょう。
相手の「鎧」をいかに脱いでもらうか
しゃべりまくる人は、自分をアピールするための、そして自分の弱みをガッチリ包み込むための最強の「鎧」を身につけています。 四方八方から攻撃されても、絶対にやられない「鎧」です。 この「鎧」を崩せるかどうかが、聞き手の腕の見せどころです。 相手を無意味に攻撃しろ、ということではありません。想定内の攻撃しかしないのではなく、相手が意図しない戦い方をすべきだということです。 しゃべりまくる人が相手の場合、その内容は、ほとんどほかのメディアを調べれば書いてあります。 事前準備をしておけば、すぐに「これは、ほかで読んだことのある内容だな」と気づくはずです。 そういう「ほかにも書いてある」内容はノーカウントとして、この取材でしか聞けない内容にこだわりましょう。 相手がしゃべりまくる人であればあるほど、その場での対策、軌道修正が大事です。 軌道修正をとにかく繰り返して、オリジナルな撮れ高にこだわりましょう。 たくさんいる聞き手の一人、その他大勢になってはいけません。 相手に「この人に取材してもらってよかった」と思ってもらうためには「鎧」を脱いでもらうことが必要なのです。