トランプ復活で米国のパリ協定再離脱が秒読みに、米国が抜けた気候外交の「空白」を埋めるのは中国
■ 中国は他の利害関係国とともに空白を埋める 袁氏によると、ホワイトハウスで政治的な変化が起きたからといって中国や他の国々が野心レベルを下げる理由はない。米大統領選の結果によって気候変動に関するリーダーシップの空白が生じるのは避けられない。中国は他の利害関係国とともにこの空白を埋める立場にある。 「中国の排出量が多いからではなく、中国は世界規模でクリーンテック解決策を提供する道を切り開いている。気候変動多国間主義には協力が必要だ。中国はEUや新興国のような国々と協力し、気候変動との闘いを継続することを奨励している」(袁氏) 中国は野心的なNDC(国が決定する貢献)目標を掲げ、化石燃料からどのように脱却していくかを明確な形で示す必要があると袁氏は強調した。国際エネルギー機関(IEA)によれば、中国は再生可能エネルギー容量を大幅に拡大しており、30年までに3倍になる可能性がある。 中国は世界の再生可能エネルギー容量拡大の60%を占める見通しだ。国家的支援が国際的な価格競争力を生み出し、太陽光発電と風力発電の合計容量が1200ギガワットという30年目標を6年前倒しの24年に達成すると予測される。
■ 日本や中国がリーダーシップを取っていくチャンス 袁氏は日本がNDC目標で化石燃料からの脱却に向けた明確な道筋を示すことを強く望んでいると筆者に語った。 国際環境NGO 350.org ジャパンの伊与田昌慶氏も「トランプ氏がパリ協定から再び離脱しても世界的な気候変動対策への影響は日本で悲観的に語られているほど大きなものではない」とみる。 「化石燃料からの脱却や30年までに再エネ3倍という合意済み目標に向かって行動を強化していくことはすでに決まっている。むしろ日本がリーダーシップを取っていく新しいチャンスがやって来たとみることもできる」と話した。 【木村正人(きむら まさと)】 在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争 「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
木村 正人