トランプ復活で米国のパリ協定再離脱が秒読みに、米国が抜けた気候外交の「空白」を埋めるのは中国
(国際ジャーナリスト・木村正人) ■ 先進国は途上国に年間5兆ドルの資金提供を [バクー発]アゼルバイジャンの首都バクーで国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)が11月11日開幕した。欧州連合(EU)炭素国境調整メカニズムや米国インフレ抑制法を巡り中国が新興国を代表する形で異を唱えて中断し、会議は波乱の幕開けとなった。 【写真】イーロン・マスク氏はトランプ氏の支援団体に少なくとも180億円の献金を行ったとの報道もある。一方、トランプ氏の勝利から3日間で、テスラ株の高騰などにより、マスク氏の資産は約7.6兆円増えたという COP29の焦点は「気候資金」で、途上国からは温暖化の責任を負う先進国に対し年間5兆ドルの資金提供を求める声が上がる。グローバルサウスの背後に中国の影がちらつく。ドナルド・トランプ前米大統領の復活で生まれる気候外交の「空白」を埋めるのは間違いなく中国だ。 米大統領選と上院選を制し、下院選も過半数に近づいている第2次トランプ政権の気候・環境担当政権移行チームはパリ協定から再び離脱する準備を進めていると米紙ニューヨーク・タイムズ(11月8日付)が報じた。パリ協定離脱の悪夢がよみがえる。 第1次トランプ政権で内務長官を務めた元石油ロビイストのデービッド・バーンハート、環境保護局(EPA)長官を務めた元石炭ロビイストのアンドリュー・ウィーラー両氏はパリ協定離脱のほか、石油・ガス・石炭掘削・採掘のため国立公園の面積を縮小することも計画している。
■ 米国のパリ協定再離脱は世界的な努力を後退させる 同紙によると、化石燃料生産を容易にするため各省庁の政策を調整するエネルギー担当官をホワイトハウスに設置。化石燃料は米国の主要エネルギー源と位置づけ、化石燃料の供給を増やすことを主目的にする可能性がある。EPAをワシントンから移転させる案も浮上しているという。 昨年、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開かれたCOP28は「化石燃料からの脱却を進め、この重要な10年間で行動を加速させる」ことで合意した。トランプ氏復活は、中国に次ぐ温室効果ガス排出大国の米国がこの流れに逆行することを意味する。 中国共産党機関紙、人民日報系の国際版、環球時報(電子版)は「米国が再びパリ協定を離脱する可能性は炭素削減と気候変動への対応に向けた世界的な努力を間違いなく後退させる」「グリーン産業に関連する米欧の保護主義も台頭している」という識者の見方を伝えている。 2045年までに100%クリーンエネルギーへの転換を目指す米カリフォルニア州のシンクタンク「気候センター」のバリー・ベッサー最高執行責任者(COO)はトランプ氏復活がもたらす影響について筆者に「非常に複雑な問題だが、いくつか言えることがある」と語る。