「大学生による遠隔指導」を部活動地域移行のモデルケースに 発案者の東京家政学院大学・松山直輝助教に聞く
例えば、知的障害を有する選手を指導する場合は言葉で伝えるより視覚的に理解させる方が望ましいとされる。特に抽象的な言葉や擬音語は伝わりづらい。そのため、連続写真を用いたフォームの「理想」と「現実」を比較する図などの資料を作成し、提示しながら指導する方法などが効果的だという。また、練習後に活動を振り返って要点を日誌にまとめて書いたり、思い出して書いたりすることが苦手な選手もいる。その場合、指導者が生徒の考えを導くように指導し、その時に教わったことをまとめて書き留められるよう支援することが、動きを覚える上で効果的な指導につながる。
ICT機器を活用した「遠隔ならでは」の進化は続く
遠隔指導を充実させるため、ICT機器を積極的に活用していることも特色の一つだ。 大学生:「あと一つ、どこか改善できるとしたらどこを改善できそう?(手本のフォームの写真を見せながら)肘を見てほしくて…」 選手:「(手本のフォームの肘は)曲がっていないですね。(自分のフォームの写真を見て)あ、曲がっていますね」 大学生:「一回日誌で振り返ってみようか。反省点はどういうのがあった?」 選手:「斜めに脇を見せることと、肘を曲げないことです」 これはある日の遠隔指導中の、東京にいる大学生と広島にいる選手のやりとり。指導中はWeb会議アプリを使ってコミュニケーションを取るが、和気あいあいとした雰囲気でスムーズに会話が進んでいる。
他にもAIで選手を自動で追いかけて撮影する「自動追尾システム」やカメラを複数台置いて視点を増やす「視野のマルチキャスト」、周りの音も聞き取れる「骨伝導型ワイヤレスイヤホン」を取り入れるなど、ICT機器を積極的に活用することで遠隔の弊害を取り除いている。これらは松山さんが一人で遠隔指導をしていた頃から活用していた。松山さんは「現地の指導と比べると遠隔ではできないことがあるかもしれないが、遠隔だからこそできる指導もいくらでもある」と話す。