深刻なバスドライバー不足! いっそのこと、地元の「病院バス」「スクールバス」を活用したらどうか
公共交通に求められる新たな視点
地域の足を確保するためには、現在の公共交通の形態にとらわれないことが必要だ。「2024年問題」でバスドライバーが不足していると各所でいわれているが、これは “緑地の2ナンバー”のバスを運転できる人材が不足しているという問題である。 【画像】えっ…! これがバスドライバーの「年収」です(計7枚) 筆者(西山敏樹、都市工学者)は公共交通を教える大学教員であり、趣味でも鉄道やバスを追っている。ゆえに、各地の車両の写真を調べているのだが、最も衝撃的だったのは、タクシー用のクラウンを 「4人乗り路線バス」 として運用していた和歌山県の有田鉄道(和歌山県有田川町)のケースだ。 タクシー用のセダン型車両だが、おなじみの「ワンマンカー」 のサボがついて、 行き先表示もある。これはこれでなかなか面白い。いわゆる 「5ナンバーのバス」 が存在したわけである。まさに温故知新で、これこそ日本の多くの地域で必要とされている柔軟な発想である。 5ナンバーや3ナンバーの緑地ナンバーの車を運転出来る「普通自動車第二種運転免許」を取得する人なら、2ナンバーよりずっと多い。路線バスにもいろいろあるが、過疎地や狭い市街地の路線なら、 ・トヨタのハイエースのような「業務用ワゴン車」 ・トヨタのノアのような「家庭用ワゴン車」 ・その他のセダン で十分だ。路線バスを乗り合いのための乗り物と考えれば、 「箱型の大型車」 にこだわる必要はまったくない。そうなれば、ドライバーの確保が容易になるだけでなく、路線バス事業者は車両の初期費用や維持費用を大幅に削減できる。 モータリゼーションの影響でタクシー会社の苦境がニュースになりがちだが、路線バス事業者とタクシー事業者が連携し、路線バス事業者が小型車両を使ってタクシー事業者に業務を委託することも考えられる。
タクシーとバスの連携
筆者は先日、埼玉県のある街に出張したのだが、路線バスもタクシーも21時で運行を終了していた。タクシー会社は夜間運行が“かきいれどき”と思われがちだが、ドライバーの高齢化が進み、日中の病院や買い物への送迎しかできないと聞いた。 高齢のドライバーは体力的に夜間運行ができないケースも多い。一方で、体力のある若いタクシードライバーを確保することもままならない。柔軟な移動を支えるタクシーの苦境を防ぐには、小型車両を上手に活用するバス事業者とタクシー事業者の連携・共存がひとつの方法となり得る。 地域の公共交通を維持するためには、モードによる縦割りは通用しない。これまでにない形での事業者同士の連携と開拓者精神が求められている。従来にない連携といえば、英国などで展開されるポストバスを国内に応用することも考えられる。つまり、 ・ポストのある場所 ・路線バスの停留所 を兼ねれば、郵便物の出し入れと乗客の乗降を同時に行うことができる。車両は客貨混載型である。実際、運輸事業者と話をしていると、路線バス事業をやってみたいと相談されることがある。 「運輸事業者ですから、昔の鉄道車両にあるような合造車両、すなわち客と荷物を両方運べるような新しいバスを開発して、参入するのはいかがでしょうか」 という話で盛り上がる。 客貨混載バスといえば、都市中心部の荷物センターから中継地点となるバス停留所までバスで荷物を運び、トラックは山奥まで荷物を運ぶ(あるいは逆に、バスが荷物を集荷して中継地点から都市中心部まで運ぶ)というパターンが増えている。 しかし、これでは郵便物や荷物を頻繁にピックアップしたり、降ろしたりするのは難しい。したがって、筆者はポストバスのようなアイデアが望ましいと考える。