渡辺 謙、ハリウッド進出から約20年。日米共同制作の大ヒットドラマで更なる魅力を発揮
日米精鋭のキャストとスタッフ陣による大作ドラマシリーズ『TOKYO VICE』の待望のSeason2が放送・配信されている。中心人物の一人である刑事、片桐を演じるのは渡辺謙。ハリウッド進出から20年来となる彼が、クリエイティブな本作の現場について語る 【写真】日本を代表する俳優、渡辺 謙の今
出会いから生まれた宝物
■今や日本を代表する俳優の一人として活躍する渡辺謙は、昨年、テレビデビュー40周年を迎えた。彼がまっすぐ突き進んできた俳優人生にはテレビドラマだけでなく、2003年の『ラストサムライ』での初の海外進出や舞台『The King and I 王様と私』で主演を務めるなど、努力や葛藤をしながら築き上げてきた輝かしい実績がある。その華やかな経歴の中から、“アレがあったからこそ今があると思える出来事を挙げるとしたら?”という問いに、率直に答えてくれた。 渡辺謙(以下、渡辺): いろんなことがリンクしているのだと思います。『TOKYO VICE』のオリジナルのシナリオを書いた脚本家のJ.T.ロジャース(以下J.T.)を紹介してくれたのは『The King and I 王様と私』の演出家・パートレット・シャーでした。その出会いから始まったことですが、それが自然と繋がっていく。 他にも、クリストファー・ノーラン監督とは『バットマン ビギンズ』がきっかけとなってその後も『インセプション』に出演することになりましたし、ギャレス・エドワーズ監督とは『GODZILLAゴジラ』でご一緒して『ザ・クリエイター/創造者』にも出演させていただきました。 こうして重ねてきたキャリアの中で僕が良かったと思うのは、現場を共にした仲間が、他の現場で再会した時に僕を覚えていてくれることです。それは、僕という人物や僕の作品へのアプローチの仕方などを把握し、理解してくれている人が増えるということ。それが僕にとって一番の財産だと思います。
日本語と英語の絶妙な会話
■J.T.との“出会い”がきっかけとなった『TOKYO VICE』では、渡辺の新たな才能が生かされる。渡辺は俳優として役を演じるだけではなく、エグゼクティブ・プロデューサーとして企画の立ち上げにも携わったのだ。 渡辺: エグゼクティブ・プロデューサーとしての基本的な仕事は日本語と英語のリズムが全然違うので、台詞に関して英語の脚本から翻訳された日本語の台詞をチェックすることでした。例えばジャーナリストの言葉、ヤクザの言葉、警察の言葉がそれぞれあって、ジェネレーションによっても使う言葉があります。さらにJ.T.の脚本にはアメリカらしいジョークが多いので、それをどのようにして日本語のジョークに変換するのかも考えます。 例えば、新聞記者のジェイクと僕が演じる刑事の片桐が会話するときは、日本語と英語が混ざるんですが、英語を話すジェイクのときは字幕が出て、僕が日本語で話すと字幕は消えます。字幕が消える、出る、消える、出るが繰り返されると、観ている人が誰の台詞の字幕なのかと混乱してしまいます。場面によっては僕が深い心情を語るときは日本語にしたいと思いますし、ジェイクの心境として英語にしたい台詞もあります。そのバランスを考えて進めていきました。 そういう意味でも、1から10話まで、自分が出ていない場面でも、頭の中でずっと台詞が回っているような感じでしたね。夜中に寝ているときに「今撮影していますが、この台詞はこれでいいですか?」という問合せの電話がかかってきて、「ちょっと待ってね」といって、その場で脚本を開いて速攻で対応しなければいけないこともありました(笑)。 ハリウッド資本のドラマで10本ある作品は初めてだったので、映画に比べると大きなエピソードで括れます。物語が進んでいくといろんなことが折り重なっていって、結構深くて絡み合うような感覚があるのを楽しめることが多々ありました。 ■この『TOKYO VICE』は1990年代の東京を舞台に、登場する人物たちが繰り広げるスリリングなストーリー展開やハリウッドの最高スタッフが創り上げるこの上ないクオリティの映像などで、多くの視聴者を魅了した。Season1は世界約120か国で放送・配信されるほど大ヒットした。