候補乱立“脱派閥”の総裁選、自民党内の現状は 平将明氏「みんな迷子になっている」政治ジャーナリスト「混乱状態が党改革の結果で産みの苦しみ」
■自民党内に温度差「統一感がないのが一番の混乱の原因」
“脱派閥”と言いつつ、いまだ麻生派が残り、党内のグループ自体が否定されたものでもない。過去12回、総裁選に関する取材をしてきた青山氏も、混乱の原因だと指摘する。「平さんみたいな人は派閥がなくなって当然と言っているが、自民党内でこのコンセプトが全くできていない。岸田さんは派閥を解散したけど、まず麻生派が残っていること自体がおかしいし、岸田さんも派閥を解散したって人と人との付き合いが残ると言っている。その付き合いを残したい人はいっぱいいる。だから岸田派のまとまりを残す理由で林さんが出ようとしていて『どっちなの』となっている。ただ一応、派閥はなくなっている前提に立っているから、上川さんが岸田派から出ようとしても止めることはできない」と、かつての岸田派の動きを例に挙げた。さらには「人と人との付き合いを起こしたい人たちが派閥的な動きをして、その中には麻生さんという、まだ残った親分がいろいろと裏番長的な動きをしている状況。非常に自民党の中の温度差があって、全然統一感がないのが一番の混乱の原因。岸田さんが自分の岸田派を解散する時に、麻生派も含めて、うちの党からは全部の派閥をなくすんだとちゃんと整地しなかった。このツケが回ってきている」とした。
■戸惑う若手議員「どうしたらいいんだ」
この状態で特に混乱するのが、当選回数の少ない若手議員たちだ。これまで派閥の意向に沿って総裁選に参加していた議員たちも、これからは自らの判断をもとに票を投じることになる。若手議員からの相談も受ける平氏は「みんな迷子になっている」という表現をした。「私より当選回数の若い人たちが『どうしたらいいんだ』と。昔だったら『俺は誰々応援している。お前は俺に世話になっているから(一緒に)応援しろ』と言われてきたからだ。私は若手になんて言い返しているかといえば『自分の頭で考えて』と。国会議員なのだから、ちゃんと独立して自分の頭で考えろよと思うが、派閥どっぷりだった人間はすぐには変わらない。だからこれから今変わっていく過程にある。今大事なのは派閥を拠点にした総裁候補はありえない。この総裁選を通じてさらに自民党は変わる」と語った。 また青山氏も、キングメーカーと呼ばれる重鎮たちの力については弱まっているとした。「例えば茂木派から2人出たり、岸田派から2人出たりしている。たくさんの人が手を挙げて混乱状態になっていること自体が、党改革の結果だし産みの苦しみ」と指摘。ただし、ポイントとして挙げたのは決選投票になった際の票の動きだ。「決選投票なる時に、実はやっぱり麻生派だとか菅さんとかの力が、この合従連衡のところで出てくるんじゃないかと今から言われている」と、10人以上からではなく、2人から1人を選ぶ時に、派閥的な動きが再び大きな力を発揮する可能性を説いた。