【山脇明子のLA通信】名門で過ごした八村塁のNBA5年目…やりやすさと自信を感じたシーズンに
■八村塁に起こった3つの出来事
ロサンゼルス・レイカーズの八村塁には、2023-24シーズンを前に3つの大きな出来事があった。 【動画】キャリアハイ36得点を挙げたジャズ戦のハイライト 1つは、「FIBAバスケットボールワールドカップ2023」を欠場したこと。昨シーズン途中、ワシントン・ウィザーズから名門レイカーズに移籍し、「NBAプレーオフ2023」ウェスタン・カンファレンス決勝まで勝ち進んだ。自らの活躍もチームを大きく後押しし、「このプレーオフは、僕のバスケ人生ですごく大きかった。これを絶対に忘れないで次につなげたい」と話していた。 またトップの位置に上がりたいという思いでいっぱいだった。制限付きではあったが、昨オフはフリーエージェントとして自身がチームを選べる立場で、もし他チームと合意したとしても同額を提示すればレイカーズに優先権があったことは、できればレイカーズに戻りたいと思っていた八村にとっては好都合だった。それと同時に、自分が成長しなければ何の意味ももたいないことは、わかっていた。だから、避難の声を浴びることを覚悟でワールドカップの出場を辞退し、自らの向上に努めた。 2つ目は、レイカーズと3年5100万ドル(約78億円)で再契約したあと、夏のトレーニングをレブロン・ジェームズとともに行う機会に恵まれたこと。「レブロンは通常、誰かとトレーニングをしません。だから彼が僕と一緒にトレーニングをしてくれた時間にとても感謝しています。僕は彼から多くを学びました」。今シーズンの序盤には、「彼にもう一つチャンピオンリングをもたらしたい」と話していた。両手を広げて自らを迎えてくれたスーパースターへの恩返し。それは、八村にとって一つのモチベーションだった。 そして3つ目は、自らを“ハーフの大将”に育てあげてくれた仙台大学附属明成高校時代の恩師佐藤久夫さんの他界だった。自らが出席すると、佐藤さんの親族に迷惑をかける可能性があるため、葬儀への出席は諦めた。だが、バスケットでの活躍をとおして「久夫先生」へ感謝を示したい気持ちと、“ハーフの大将”として自らが頑張り続けることで、次に続く選手につなげていくという思いはいつまでも変わらない。 2024年のNCAAトーナメントでは、仙台大附属明成の後輩、菅野ブルースのステットソン大学が出場を決めた。八村の背中を追って渡米し、短大からNCAA1部の大学入りを果たした菅野は故障中だったが、同大の出場決定を聞いた八村は、「うれしい。僕が第一弾のハーフとして(仙台大附属明成に)入って、久夫先生もすごく良くしてくれていたので、もっとそういう子たちが出てきたらいいなと思います」と声を弾ませた。そして、「これからも、『久夫先生のために』というのもあります」としみじみと語った。