<独自>遮断機下りないまま列車進入32件 過去3年で、国開示資料を本紙分析 車と衝突事故も
遮断機が正常に下降していないのに、列車が踏切へと進入するトラブルが、令和4年度末までの3年間で少なくとも32件起きていたことが21日、産経新聞の調べで分かった。設備の異常や人的ミスなどが原因。横断中の車が列車と衝突した例もあった。乗客106人と乗員1人が死亡したJR福知山線脱線事故から25日で19年。踏切の無遮断トラブルは、脱線事故のような惨事を招きかねず、鉄道輸送をめぐる安全への意識や対策が再び問われている。 【グラフで見る】遮断機で正しく下りなかった原因 鉄道の事故やトラブルは、事業者から国土交通省への報告が規則で義務づけられている。遮断機が設けられた第1種踏切は全国約3万カ所。産経新聞では、国交省への情報公開請求で開示された資料を基に、遮断機が正しく下りていない状態で列車が踏切へと進入した事例を4年度末から3年間遡(さかのぼ)り、独自に集計、分析した。遮断棒の折損など、別の事故やトラブルが原因だったケースは除いた。 無遮断トラブルは19道府県で確認され、4年度17件▽3年度9件▽2年度6件-だった。原因別では、設備の異常などが15件、運転士や保守点検要員らによる人的ミスが13件で、落雷といった自然災害によるものもあった。資料には、レールに錆(さび)が生じたことで列車接近を検知できなかったり、作業員が踏切の電源を入れ忘れたりといった状況が記されていた。 実際、無遮断の踏切への列車の進入と車の横断が重なり、負傷者が出たケースもあった。 埼玉県皆野(みなの)町の秩父鉄道上長瀞(かみながとろ)-親鼻間で4年7月、遮断機が上昇したために踏切を横断しようとした車と接近した列車が衝突。車のドライバーが負傷し病院へ搬送された。列車の運転士は50メートル手前で遮断機の異常に気づき急ブレーキをかけたが間に合わなかった。付近で停電が発生し、送電がストップした際の設定に原因があった。 踏切の無遮断トラブルは、5年度以降もたびたび発生。6年2月には大阪市西成区の南海高野線の踏切で、列車が近づいているのに遮断機が上昇し、横断しようとした車と列車が接触している。 トラブルが相次ぐことについて、国交省も危機感を抱いており、担当者は「原因はさまざまだが、同じ事象が繰り返されないよう、鉄道事業者には対策を求める」としている。(調査報道班)